自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>>第3章第2節(16)授業形態と授業方法の関係

教育研究の内容・方法と条件整備

第2節 国際経営学部

(16)授業形態と授業方法の関係

1)授業形態と授業方法の適切性、妥当性とその教育指導上の有効性
 まず、クラス人数について、CEは各クラス人数が予め設定されている。15名を基準とする基本となるスモールクラスと、それが二つ集まったミディアムクラス、そして4つのクラスが集まったラージサイズのクラスからなっている。基本となるクラスは、2003年度から Power-up Tutorialクラスとして3人1組みの編成が5組作られる形となった。2クラス合同クラスではリーディング、ライティング、ディベイトなどの指導が行われている。ラージサイズクラスでは、 Joho Eigo WinとJoho Eigo Macというコンピューターを用いた授業が行われている。

 ゼミナール科目も基本は少人数クラスであり、基礎ゼミナール、英書講読ゼミナールはほぼ毎年20名前後の学生数からなっている。専門ゼミナールもこれまでは16名前後を基準とするクラス編成を行ってきた。

 情報教育では、必修科目の情報処理はパソコン設置教室の設置台数以内でクラス編成を行い、必ず各学生が1台のパソコンを用いることができるようになっている。

 その他の講義科目は、基本的には人数制限は行っていない。地域研究科目(全学開放科目)及び学部選択必修科目(簿記原理、経営学総論、経済原論、国際経営論)はかなりの数の学生が履修するため、同一科目の複数開講を実施し、一つの授業の学生数が過大にならないように努めている。200名を超える受講者が履修登録をした場合には、クラス分割を行い適正な学生数を保持するようにしているが、こうした現状はどのように評価できるだろうか。

 Power-up Tutorialは学生からは少人数での会話練習ということで好評である。その他の英語クラスについてはそれぞれの授業形態に合ったクラス人数となっているといえよう。英語教育における授業形態の問題点としては、パソコン機器を用いた英語教育クラスにおいて、Joho Eigo WinとJoho Eigo Macの2種類が並存していることがあげられる。パソコンによる授業が二つ、しかもOSが異なる授業が本当に必要なのか、情報教育との連携が十分に行われているのか、といった問題点がある。この授業では英語を教えているのか、それとも英語でパソコンの機器操作を教えているのか、といった疑問が出されているのである。他方では、情報教育での授業内容を学生があまり覚えていず、パソコン操作についてはこの英語の授業が役立ったという、皮肉な結果も生じている。

 講義科目は、上述のように受講者数に応じてクラス分割を行い、また多数の受講者が予想される科目についてはあらかじめ複数教員を配置するといった措置を講じてきた。しかし、こうした問題が生じる科目のうちいくつか(地域研究科目)が全学開放科目であるということもあり、毎年、実際の受講者が何名になるのか確実な予想ができないのが現状である。

 こうした評価に基づいて改善の方向を考えて生きたい。英語教育における授業形態上の問題を解決するためには、英語教育で何をめざすのかという基本的な目標とカリキュラム全体における英語教育の位置づけとを検討しなければならない。特にパソコンを用いた英語クラスは、あくまでも英語教育の一環であるとの位置づけのもとで、情報教育との整合性をはからねばならないだろう。新設の現代国際学部では、こうした観点から、Joho Eigo WinとJoho Eigo Macにあたる授業は廃止し、他方情報教育科目を充実させることとなった。これはパソコンを用いた英語教育を否定するものではなく、むしろ授業においてパソコンを用いて教員が教育を行うことと、学生が各自でパソコンを用いて自習するということとをきちんと区別し、授業においては、学生と教員との顔が見える相互交流こそが重要であるという観点からのものである 情報教育科目については、授業の性質上、自ずからクラス人数は決まってくるので、その点で問題は生じていないが、従来の英語教育との内容の重複という問題もあり、かつ高校における科目「情報」の導入により基礎的なパソコン操作はすでに修得している学生も多い、ということから、新設の現代国際学部においては「情報スキル科目」という名称を持つ情報教育科目群では、必修科目を固定せず、複数科目を設置し、その中の6単位を選択必修とし、学生が自らの進度と関心に応じて、科目を選択できるようにした。

 その他の講義科目については、授業人数の問題は履修登録における登録人数制限を導入しなければ、人数が過剰になるという問題はいつでも生じうることになる。しかし、人数制限は他方では、学生の選択の幅を狭めてしまうことにもなり、授業の質の確保と学生の選択希望の尊重という、場合によっては相反することがある二つの問題の間での試行錯誤は余儀ないだろう、と言わざるを得ない。
2)マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
 情報機器の取り扱いおよび、それに基づくソフトの利用に関する授業が情報教育科目で行われている。これは、国際経営学部の専門科目を学ぶ上で学生が必要とする情報処理に関する能力を育成するためのものである。さらに、すでに上で指摘したように、英語教育においては、 Joho Eigo WinとJoho Eigo Macという科目が積極的にパソコンを用いた授業を行っている。また専門ゼミナールでは、何人かの教員によって、学生のプレゼンテーション能力の向上のために、プレゼンテーションソフト「パワーポイント」が積極的に授業に導入されている。さらに、専門ゼミナールクラスのうち、専門科目担当教員(ツーリズム担当の外国人教員)と日本人の英語教員によるジョイント・ゼミナールという特色ある形態をとっているゼミナールでは、海外学生との共同プロジェクト学習で情報収集・英語を用いての共同討議などにおいてインターネット活用が積極的に行われている。また同じく専門ゼミナールのあるクラス(国際会計コース)では、種々の会社の財務状況調査のためにインターネットが積極的に活用されている。

 2年次の英書講読ゼミナールのあるクラスでは、テキストの日本語訳を学生はEメールで教員に送り、教員はそれを添削してメールで返すといった作業が行われている。Eメールの授業での積極的活用といえよう。その他、レポートをワープロソフトで作成すること、課題をEメールで送ることなど、各授業のなかで具体的な課題遂行にマルチメディア活用を課すことで、学生のマルチメディア活用能力の向上が目指されている。

 上述の種々のクラスにおいてはマルチメディアを活用する授業内容が盛りこまれており、それによって学生のマルチメディア活用能力がある程度向上しているとはいえるだろう。しかし、現実にはさまざまな問題点がある。一つには、マルチメディア機器やソフトの利用可能であると思われる領域でまだそうした機器・ソフトが導入されていないことがある。例えば、学生の簿記に関する能力向上に使用できる簿記自習ソフトがあるが、これはまだ導入されていない。 また、経営シミュレーションゲームなども学生のビジネスに関する関心を高める意味で有効であると考えられるが、これも授業で積極的に導入されるには至っていない。こうしたソフトを導入することでどの程度の効果があるのか、或いはどのような教育を目指すのか、そうした検討すらも十分なされているとは言い難い状況である。

 マルチメディアが授業で活用されている場合でも問題はある。英語教育のJoho Eigo Winと Joho Eigo Macについては、問題点があることはすでに指摘した通りである。また専門ゼミナールの各種ソフトを使った授業においても、まずソフトの使用方法から説明しなければならないことがしばしばある。マルチメディアを活用するというよりむしろあらためて情報教育がそこで行われているともいえる事態である。これは基本的には、学生にどのような情報処理能力を求めるのか、そのためにはどのような教育がなされなければならないのかが、カリキュラム全体を見通した検討がなされていないためであると考えられる。

 Eメールの活用については、もう少し具体的な問題がある。Eメールでレポート提出を義務づけた場合に、学生と教員との間に「出した・出さない」といったトラブルが生じることがある。Eメールのみを用いてのレポート提出の問題点をきちんと把握した上でEメールは活用されるべきだと思われる。

 こうした現状と評価を踏まえ、改善の方策を考えるならば、何よりも情報教育がカリキュラム全体のなかで明確に位置づけられねばならないということがいえる。学生が社会人になる際、どのようなマルチメディア活用能力が求められているのか、本学ではそれに対してどこまでの教育を行うのかを検討すること、さらに専門教育を行う際にどのようなマルチメディア機器・ソフトが活用されるのか、そのために前もって情報教育ではどのような教育が求められているのかが、今後さらに検討されねばならないだろう。上述のように、新設の現代国際学部では、学生が多様な情報処理能力を自らの関心に沿って身につけることができるようにする、という趣旨で複数の情報スキル科目を選択できるようにした。他方では、しかし、学生が社会人になるに当たって最低限身につけておかねばならないとされるマルチメディア活用能力もある。たとえば、ワープロソフト、表計算ソフト、そしてプレゼンテーションソフトの活用能力である。こうした能力をどの科目で身につけさせるのかを具体的に決めていく必要が今後あると思われる。場合によっては、マルチメディア活用能力を身につけるためには、具体的な課題を果たすという作業の方が有効であるという考え方もある。その意味では、各専門科目でマルチメディアを積極的に活用するという方向性も十分検討に値する。