自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>> 第3章第1節(11)教育改善への組織的な取り組み

教育研究の内容・方法と条件整備

第1節 外国語学部

(11)教育改善への組織的な取り組み

1. FD活動に対する組織的取り組み状況の適切性
 平成12年度に学長を議長としてFD委員会が組織され、授業の活性化のために重点目標を設定して、全学的に教育改革に取り組んでいる。平成12年度には、専任及び兼任教員全員を対象として、「学生の受講態度」についてのアンケートを行い、本学の学生の学業に対する態度を調査した。その際の主な調査項目は、出席状況、脱帽、携帯電話の使用、飲食物持ち込み、遅刻・早退、私語についてである。このアンケートに引き続き、翌平成13年度には「授業の活性化」を重点目標として、次の5項目を決めた。
  • 学習目的・到達目標の明示
  • 学生の関心に合致したテーマの選択
  • 分り易い授業の方法、
  • 学生参加型授業の工夫
  • 学習効果のこまめなチェック
 この5項目について、専任及び兼任教員全員にアンケートを行い、その結果を全員に開示するとともに、FD委員会の指導の下に教員各自が授業改革に取り組んだ。しかし、その後FD活動は残念ながら低調である。FD活動を再度活発化させ、授業方法の一層の改善に取り組む必要がある。

 授業の運営に関しては、個々の教員の裁量に委ねており、学生の授業態度等も個々の教員の指導によるよるところが大きい。アンケートを実施した直後は、教員の意識も高く、比較的よく運営されていたが、しばらくすると私語や遅刻が目立つようになった。そこで、時折、「講義室内での学生の指導について」のお願い文を教務部長名で各教員あて送付し適切な授業運営を促している。

 また、授業の活性化に関しては、FD委員会のアンケートの実施以後、各学部・学科において検討が行われ、アンケートの中で意見が多く出された少人数教育の実施については、その実現に向けて計画がなされている。また、学生による「授業に関するアンケート」「学生満足度の調査」についても、各学科で個別に実施され、改善に向けての議論が行われている。

 これまで本学で全学的に実施してきた授業改善に関するアンケートは、「学生に問う前に自分自身(教員自身)に問うことが必要である」との考え方で、主に教員を対象としたアンケートを実施してきたが、今後は、学生による「授業に関するアンケート」を全学的に実施し FD活動を進める上での重要な資料としたい。
2. シラバスの適切性
 大学全体の取り組みとして、毎年シラバス(専門科目及び共通科目の講義要項)を作成し、学生に配布して、授業科目名及び担当者、授業科目の目的、講義概要、授業計画、テキスト、成績評価の方法を明確化し、授業の概要を理解させるなど、学生の授業科目履修の重要な手引きとなっている。シラバスのこれらの要項は、日本私立大学協会の『学部における教育・研究の充実とその運営』(平成5年9月)にほぼ準拠している。現在のシラバスは、学生が自主的に大学で学修するにあたり、重要な手引きとなっているが、主に授業概要の説明を第一目的としているため、改善の余地がある。例えば、科目によっては統一シラバスになっていたり、授業の内容及び進め方の詳細な説明を欠いている。また、担当者全員が次の( )内の必要要件をすべて網羅しているわけではない「授業の名称・担当教員名・開講時期・授業概要(主要テーマ)・評価基準・教科書(参考書)」。勿論授業形態によっては、毎回の授業内容をあらかじめ記載することが困難であるため、学科独自のシラバスを年度ごとに作成し、大学共通のシラバスに不足している点を補っていたり、個々の教員が授業の開始時に別途作成したシラバスを配布したり、あるいは毎回の授業の中で次回の授業計画を学生に提示している例も見られる。しかしながら、外国語学部のみならず、国際経営学部においても共通の大学のシラバスを、全ての授業について必要要件が網羅された、より充実したものに改善する必要がある。その一環として記載事項を次のとおり改め、平成16年度より実施予定である。
  • 授業名・担当教員名・単位数・開講学年、開講期・必修、選択の別
  • 授業概要(主要テーマ)並びに学習目標
  • 目標達成のための授業方法及び計画(準備学習等についての具体的な指示を含む)
  • 成績評価基準・使用教科書(参考書)
 以上は、当面の取組であるが、他方、アメリカの実情並びに我が国の先進的な諸大学の事例を見るとシラバスは授業1回ごとの内容、進め方などを教案の要約のごとくにまとめたものが多く用いられており、作成過程で関連科目間の綿密な調整がなされ、かつ、毎回の授業において、その都度の授業の要約として利用されていることを承知している。今後の研究課題として、取り上げていく必要があると考える。

 以下は各学科における教育改善への組織的な取り組みである。
1)総合教養
1. 学修の活性化と教育指導方法の改善
 まず、メディア情報教育センターでのBlackboard検討部会では、ホームページ委員会の組織の下にあるホームページ作業部会と連携を保ちつつ、伝統的なホームページのあり方とは別に、大学全体のポータルサイトを構築する取り組みを検討している。この検討は既に複数の教員の下で数年前から始まっており、WebCTやBlackboardといったソフトウェアを利用した、全学のオンライン化のための研究が行われて来た。従来の施設としての物理的な空間に縛られることのない、時間・空間を問わないオンライン上の大学のあり方を研究すると同時に、教育情報をオンラインに載せて発信することの出来る能力を持った教員を育てる試みが始まっている。

 また同検討部会は、これら既存のソフトウェアの持つ限界を克服すべく、言語教育に特化したWeb上のテスティング・ソフトウェアと、その自動採点・自動評価システムを独自に開発し、全学的な利用に供すべく実験と開発を続けている。このソフトウェアは、日本語教育センターでのクラス分けテストに試用され(2002年度・2003年度)、その有用性と評価の堅牢さが実証された。さらにこれらのソフトウェアを全学的な基盤として、大学全体のインフラストラクチャーとすべく模索が続けられている。ただ、目下は、この教育インフラは、全学的な広がりを示すには至っていない。大学がより組織的にこの問題に取り組み、現在研究と実験を続けている教員たちを中心に、学生(大学院生)のみならず、将に現有の教員と職員にこの情報インフラを利用して大学の教育を構築する教育活動を展開すべき時に来ている。いまだ、この全学のオンライン化への取り組みが十分組織化されているとは言えないと、Blackboard検討部会は考えている。これはハードウェアの問題でもなければ、オンライン化のためのソフトウェアの問題でもなく、組織に所属する人間の問題である。大学の運営に若い世代をどしどしと登用できる機構となっていない組織体としての構造的問題であることは明らかである。全学的に、教職員全員に対する教育を行う組織を構築し、全員の参加のもとで情報インフラを活用する大学の変革への取り組みを始めるべきであろう。

 また、体育科目では、学生の学修の活発化を促すために、正課授業外でのトレーニングや練習に対する補助、各種スポーツ大会の紹介や出場にかかる助言、また正課授業の教材に関連する資料などの指示や提供を行っている。教員の指導方法の改善を促す措置としては、担当教員間において、非定期的に研究会などを行っている。学生の健康を運動の面から考えさせ、日常的に運動することを意識させ及び実践することを促す指導を行うことによって、学生の学修を活発化させている。また、教員自身の教育上の資質向上のために、専門分野の研究や教材研究を行っている。体育・スポーツを生活の中に積極的に導入させるためには、正課授業内のみの指導では不十分であると言えるだろう。従って、正課授業において積極的に働きかけるのはもちろんのこと、今後はこのような働きかけを更に充実させなければならないだろうと思われる。教員の指導方法の改善を促す措置については、早急に新たなシステムの導入を考えなければならない。学生は、体育授業の中では意欲的に運動して、健康の維持増進に必要な運動量を確保できているが、体育授業以外の日常生活では、運動不足の状態であるという調査結果が出ている。学生の体育・スポーツへのニーズの高まりや多用性は、これから予測し得る現象である。学修の活発化を図るためにも、かかる情報について十分な準備を続けていく必要がある。指導方法の改善を促すためには、現行の取り組みを継続しつつ学生による授業評価などの導入を検討し、授業に関する多方面からの情報を検討する予定である。体育授業は学生の運動不足を改善する重要な役割を果たしており、今後も学生の健康のために開講する意義は大きいと言える。

 他方、基礎ゼミは、担当教員全員で構成される基礎ゼミ委員会での合意に基づいて運営されている。基礎ゼミ委員会では、授業上の諸問題の協議・検討、共通教材・共通課題の検討、アンケートの実施と集計、教案集の保存と開示などを行い、教員が授業の質を上げ指導方法を改善するのを支援している。基礎ゼミ委員会という協議の場を設置することにより、教員各自の問題が科目全体の問題として一般化され、それについて共通認識が持てる。問題解決能力も高いので、委員会設置の意味は極めて大きい。
2. シラバスの適切性
 教養教育の重視を目的としている本学にあって、教養教育におけるシラバスの作成は重要な課題と捉えている。即ち体系的に共通科目を構築するためには、個々の授業の質的向上を図りつつ、各教養科目間の体系と連携、専門科目の基礎教育としての位置づけ等を明確にし、学生の知的関心に応じて履修させるためにはシラバスの充実が欠かせない。

 多くの大学が学部毎、学科毎にまず前段として共通科目を載せ、1〜2年次に履修するためのシラバスとして作成しているが、本学では科目毎に将来の専攻する分野に応じて履修すべき科目を明示し、且つそのシラバスにおいて授業を受けるために必要となる予習の程度、講読準備をすべき文献の提示など、単に15回にの講義進度の明示に留まらず、学習の仕方から成績評価の方法までを記載し、学生がシラバスに従ってある程度自主的に学習できるよう作成している。
3. 学生による授業評価の導入状況
 組織的に共通の質問をする授業評価は実施していないが、個別に実施している科目もある。体育では、授業ごとに学生の満足度を具体的に調査し、期末には学習環境についてさまざまな角度から学生に評価させている。また基礎ゼミでも期末に教育効果や希望を自由に記述させている。基礎ゼミのアンケート結果は、毎年考察を加えて冊子にされている。単に一人の教員の授業評価に止めるのではなく、科目全体、ひいては日本語教育の現状を誰もが認識できるという意味で、この冊子は有効である。

 また、体育の毎回の授業評価は、迅速な授業改善に役立ち、期末の授業評価は、具体的で詳細な内容であるため、次期の授業改善の指針としては非常に有効である。先ずは総合教養科目(共通科目)全体にわたって、受講生の授業評価をチェックするシステムを作るべく計画中である。
2)英米語学科
1. 学修の活性化と教育指導方法の改善
 学生の学修の活発化のため、創設時より少人数教育の実施を目標としているが、英米語学科のネイティブの教員による専攻語学必修科目では、約20人のクラスサイズで授業を行っている。

 平成15年度からは1年生を対象にPower-up Tutorialの科目が設けられ、ネイティブの教員 1名に対し受講生3名という極めて少人数の授業を行っている。平成16年度には2年次の講読・文法の授業が、約20人のクラスサイズで行われる予定である。

 また、ネイティブの教員による会話や英作の授業では、習熟度別クラス編成を行い、より学習効果の高い授業を目指している。

 学生の学修を活性化するためのひとつの方策として、英米語学科では特に新入生に対して平成15度より学外研修施設における一泊のフレッシュマンキャンプを実施している。この行事は、シラバスの意義・活用法を含めて、大学教育の目的、カリキュラム、履修方法等を体系的に説明すると同時に、相互の親睦の場を提供し、少しでも早く大学生活に慣れさせ、大学での学修の円滑化を図ることを目的としている。

 2年生から4年生には、学内でクラスアドバイザーとの懇親会を行っている。全学年にわたるクラスアドバイザー制やオフィスアワーの導入により、教員が研究室で学生の相談を受ける態勢づくりがなされており、学修に支障をきたした学生のための問題解決の一助となっている。

 教員の教育指導方法の改善を促進するための措置としては、上記の平成13年度に全学的に行われた「授業の活性化」に関するアンケートに加え、英米語学科でも平成12年度より毎年学科全体で学生の「授業評価及び満足度」のアンケートを行っており、アンケート結果は学科の全教員に公開される。その結果などをふまえて授業やカリキュラムを改善するため、学科内に各科目の検討グループからなるFD活動組織がある。科目ごとにコーディネーターが決められ、担当者間で授業内容やテキストの調整やカリキュラムの検討などを行っている。

 また、兼任教員と専任教員との打合会を年に一度実施し、担当科目の内容調整を行うことにより、英米語学科全体の教育指導方法の改善を促している。
2. シラバスの適切性
 英米語学科では、シラバスの内容の充実を図るため、教員作成のシラバスに関する学科独自のシステムを採用している。大学作成のシラバスとは別に、学科独自のシラバス"Course Out- line"が、年度ごとに作成されていて、大学共通シラバスに不足している点を補う役割を果たしている。大学作成のシラバスには記載されていない項目(授業回数、授業の目標とその内容及び進め方、履修上の注意事項等々)を記載し、専任及び兼任教員全てが閲覧できる状態にしてある。その学科のシラバスは、同一科目を担当する教員同士が、お互いの授業の内容を知り、調整することを主眼とするが、多くの教員がこのような詳細なシラバスを学期の最初の授業で個別に配布・説明している。

 また、英米語学科では従来からFD活動に対する学科の取り組み状況を積極的に行っており、 、科目の担当者により授業改善のため活発な話し合いがもたれていたが、平成13年度より授業やカリキュラム改革に取り組むため、コーディネーターが科目ごとに決められた。平成14年度からはカリキュラム及び授業の改善と教員間の連携を円滑にするために、それまでのコーディネーター制をより組織化し、全教員を8つの作業グループに分け、それぞれにコーディネーターを設け、学科内にFD活動組織がつくられた。学生の授業評価の結果を受け、平成14年度より 2年をかけてFD活動組織のグループのひとつである、講読の作業グループが中心となって、各学年に2科目ずつある英語(講読・文法)科目の改善に取り組み、平成16年度より新しい計画に基づいて、英語(講読・文法)の授業が行われることになっている。

 また、相当数の兼任のネイティブの教員が授業を担当しているため、それらの教員と学科の関係を円滑にするため、専任のネイティブの教員のコーディネーターを設け、専任と兼任教員の連携の円滑化に大きく寄与している。英米文化関係のグループでも、授業内容の調整のため会議が開かれている。

 前述のように、学科内FD活動促進のためには、教員がまず全学的FD活動内容を知り、そのうえで、全学的FD活動と学科内FD活動が互いに連携をとり、円滑に機能するような組織の再構築が必要と思われる。FD活動を活発化させることにより、教員同士連携を強化し、教育課程の検討を深め、より良い授業を組織的に可能にしていく必要がある。同じく、学科内のFD活動組織の全てのグループにおいて、より良い授業の実現やカリキュラム改善を目指して、いっそう活発な活動が望まれる。
3. 学生による授業評価の導入状況
 英米語学科では平成12年度より、学生による「授業評価及び満足度」のアンケートが導入された。平成14年度には以下の項目でアンケートを行った。
  • クラスアドバイザー制
  • 習熟度別クラス
  • カリキュラム
  • 関心のある学習分野
  • 大学の施設とその利用度
  • 授業評価
 学科では各年度のアンケート結果に基づき、様々な改善が行われつつある。例えば、他の科目に比較して、英語(講読・文法)科目の評価が低めであったため、二年前より英語(講読・文法)科目の見直しを始め、平成16年度より新しい計画に基づいて、授業を行うことになっている。また、同じく学科の授業評価結果に基づき、学生の要望の高かったネイティブの教員による会話力重視の授業(Power-up Tutorial)が、平成15度より行われている。

 現行の「授業評価及び満足度」のアンケートには、授業評価や施設利用度や学生生活の調査など異種の質問事項が混在しているため、種類別にアンケートを分割する方法も、検討の余地があると思われる。また、授業評価も科目(講読・文法、会話・作文、英米文化、総合演習など)毎で、授業毎でないため、アンケート結果は、必ずしも個々の教員の授業の直接的な参考資料とならない可能性がある。教育指導の改善を目標とした、より信頼に足る客観的評価を得ることのできる「授業評価」アンケートにするために、アンケートの目的、質問事項及び質問方法などをデータのフィードバックの方法や管理の仕方を含めて、根本的に学科で充分検討する必要がある。学科のアンケートとは別に、授業担当者が個別に行うアンケートが行われているが、実施は担当者に任されている。個別アンケートを実施する教員数は把握できていないが、相当数の教員が期末にアンケートを実施して、次期の授業の改善に利用していると思われる。
3)フランス語学科
1. 学修の活性化と教育指導方法の改善
 学生の学習の活発化への取り組みについては、上記「2.厳格な成績評価のしくみ」の5)で示した通りである。
教員の教育指導方法については、各教員独自の方法論に沿い授業が進められてきた。平成15年7月に実施した1〜2年次生(a:回答数177)と3〜4年次生(b:回答数86)へのアンケート調査によれば、専攻科目についての理解度について、「分かり易かった」(a:28%、b:14%)、「どちらかというと分かり易かった」(a:34%、b:21%)、「ふつう」(a:23%、b:27%)という結果が出ている。上級年次では、やはり理解度が下がっていると考えられる。また、同アンケート調査によれば、授業を「評価する」(a:41%、b:23%)、「どちらかというと評価する」(a:33%、b:23%)で、下級年次では過半数が評価しているのに対し、上級年次では相対的に低い。

 専攻語学の下級年次担当の教員は、基礎の重要性を十分認識して、お互いに情報を交換し合い、個別指導の形式を取り入れるなど、授業方法に工夫を凝らしていることがアンケート結果に反映していると考えられる。もちろん、同時に実施した教員へのアンケート結果も、上級年次の教員がそれぞれ授業方法に工夫を凝らしていることを示している。しかし、例えば、最初のアンケート結果に関して言えば、下級年次の学習内容との連携が巧く行っていないなどといった点が問題点として考えられるのである。また、後者のアンケート結果については、学生に授業内容の意義が十分伝わっていないとも考えられる。

 こうした問題点は、今後学科会議の議題とする。そして、このような学生へのアンケート調査を今後も継続し、その分析を踏まえて、学科全体で教育方法の改善に向けた検討を進める必要がある。それは学生の学修の活発化にも繋がるはずである。
2. シラバスの適切性
 各年度の科目の登録にはシラバスが非常に重要であるという認識を各教員は持っており、学科の専攻科目に関するシラバスは、学内の統一的な基準に従い、授業概要、評価基準、使用教科書(参考書)に分けて記載をしている。特に授業概要を学生が理解し易いよう配慮することを念頭に置いて、各教員は記載を行っている。

 しかしながら、学生に対する3.の授業評価アンケートのうち「シラバス」に関する項目(回答数86)では、シラバスは、「概ね役立った」(21%)、「役立たなかった」及び「どちらかというと役立たなかった」(17%)、「シラバスを参考にしなかった」(49%)という結果が出た。特に最後の回答については問題があり、検討が必要である。シラバスは、全体として相当の量があり、学生にとっては活用しにくいのかもしれない。シラバスは、学科独自の形式を採用するわけにはいかないが、少なくとも、学生の反応も考慮しながら学科会議の場で再検討したい。
3. 学生による授業評価の導入状況
 過去に全学で実施したアンケート以外に、フランス語学科の自己点検・評価の実施に先立ち、平成15年7月、専攻語学、フランス語学研究、ゼミナールの各科目について、学生による授業評価アンケートを学科内で実施した。この新たなアンケートの具体的な項目は、「授業の理解度」、「授業の目標」に関する理解、「授業の方法」、「授業に対する関心度」、「教材の難易度」、「授業内容の適切度」、「シラバス」、「授業の総合評価」などである。その集計結果を見ると、学生の授業に対する率直な意見が反映されており、各教員にとっても、また学科全体にとっても、現状の改善及び学科の将来計画にも資するものである。

 このように、授業評価の導入の意義は、本学科にとって極めて大きいもので、その導入は高く評価されるべきものである。今後もこのようなアンケートを適宜実施し、講義内容及び学科組織の充実に学科が一丸となって努力したい。
4)中国語学科
1. 学修の活性化と教育指導方法の改善
 授業では2・3年生の専門語学科目では習熟度別クラス編成を導入し、中でも会話の授業では、1クラス15人程度の少人数で、全て中国人教員により、日本語を用いない授業を行っている。特に2年生では提携校である北京外国語大学から招いた対外漢語教育の専門家に全ての会話授業を担当してもらっている。

 課外においては、1年生の1学期には新入生全員が上級生について発音練習をするパートナー制度を設けている。基本的には1対1で、1週間に1回は行うことを義務づけている。

 発音と会話の練習に関しては、積極的に中国人留学生を活用している。1年生の発音練習にも彼らの支援を求めることがある以外に、主には2年生以上の弁論大会参加者の中国語原稿のチェックと発音会話の練習を依頼している。そうすることによって中国語運用能力の向上を図るとともに、日本人学生と中国人留学生の相互交流を促進している。

 その他、学科研究室を常にすべての学生に開放している。教員の研究室もすべてそこに面している構造になっているので、ほとんどいつも学生がいて、予習をしたり補習をうけたり、教員と雑談をしている。

 また、習熟度別クラスは、授業の効率改善と学習意欲を刺激するために導入した。上位クラスでは所期の目的を実現したと思われるが、下位クラスでは効率改善はともかく、学習意欲は学生によって異なる。発奮するものもいれば、喪失するものもなしとしない。問題は残るものの、全体としては改善の効果が見られる。会話の授業は、中国人教員が中国語だけで教えているので、初めのうち戸惑う学生もいるが、すぐに適応している。効率だけから言えば適宜日本語による説明もあったほうがよいかも知れないが、本学の学生は2年生以上になればほとんどが中国に留学することになるので、そのことを考慮すれば現在の方法が望ましいと考えられる。

 パートナー制度は、中国語は入門期における発音の習得が決定的に重要との認識から、課外での発音の練習量を確保することを目的としているが、一定程度達成していると考えられる。この制度は上級生にこの制度の意義をどれだけ理解させられるか、つまりは上級生がまじめで熱心であることが鍵である。上級生と新入生の人間的な相性の問題もあるが、上級生が熱心にしてくれればそれは二義的問題である。また学年間の交流を促進するという予期しない効果もあった。留学生の活用は、現在までのところほぼ順調にいっている。本学の中国人留学生は水準が高いことと、日本人学生の方も目的がはっきりしていることが大きいと考えられる。

 共同研究室の開放による学生と教員の交流については、常に顔を見せる学生がどうしても 一部にとどまることが目下の問題である。

 上記のうち、目だった問題のあるものについて改善の方案を考える。
習熟度別クラスは、下位クラスの学習意欲をいかに向上させるかが焦眉の急の問題であるが、彼らがあまり意欲をもてない理由はさまざまなので、個別的な対応が何としても必要である。教員一人一人が親身になって彼らの悩みを聞き話相手になり、授業でも放課後の雑談でも中国に興味関心をもたせるように努力することが求められる。

 パートナー制度の問題点は上にも書いたように上級生に自覚と意欲をもってもらえるかどうかである。言うは易く行なうは難い問題だが、教員が地道に説得をし、様子を観察して、うまくいかない組み合わせの場合は随時交代させるなどの措置をとることが必要である。
また、1年次から3年次の講読、会話についてはそれぞれ教科書を統一し、担当教員も複数にならぬようにしている。

 中国語・中国語教育法研究会を組織し、専任教員以外にも非常勤や、中国の提携校の教員にも随時参加してもらい、研究活動を行ってきた。その成果は『中国語・中国語教育法の研究』(名古屋外国語大学研究叢書第3輯2000年2月)として出版している。この研究会はその後組織替えして、3年次生用講読教材を作成するために活動を続け、独自教材『精選中文読本』(2001年)を編纂した。それ以後も改訂版を出すために活動は続いている。現在は約二ヶ月に一度、講読教材の候補となる文章を持ち寄り、それについて討議し、解説や注釈をつける編集会議を行っている。また、平時における学科会議においても授業の問題点や教育指導法の改善点などを随時討議している。

 この他、年度始めには、非常勤教員との教学に関する懇談会を実施している。それによって教学方針について相互の理解を深め、また問題点を議論することによって改善を図っている。

 教科書の統一は学修を計画的統一的にするために有効であった。またこうすることによって、習熟度別クラス編成も可能となった。

 中国語・中国語教育法研究会は学外においても特色ある研究として認められ、日本私学振興財団の研究補助金の交付を受けた。その成果『中国語・中国語教育法の研究』も全国的に類書は皆無であろうと思われる。3年次生用の独自教材も、単なる実用的読解力の養成を目的としたものではなく、同時に現代中国を深く理解するために各分野必読の文章を選び、解説と注釈を施したもので、これも類書は絶無である。

 教科書は現在、3年次の講読を除いて、既成の市販教科書を使用している。それら市販教科書に対する学生の評価は高いけれども、理想は1年次から系統的に作成した独自教材を作ることである。現在の3年次講読教材作成が一段落すれば、1・2年次の教科書を制作しなければならない。3年次講読教材は、既成の教科書の枠に捉われずに、内容のある文章をどれだけ探してこられるかが問題である。従って、日頃から幅広く文献を読み、教員自身が現代中国への理解を深めていくことが必要である。
2. シラバスの適切性
 シラバスはすべての授業について、授業概要、評価基準、教科書(参考書)の三点について記述している。なお、専門語学科目については、担当教員がバラバラに書くのではなく、学科として記述を統一している。シラバスの内容三点については、必要にして十分と考える。専門語学科目のシラバスを学科として意思統一したものを記載するのも統一的系統的な教学のためには必要なことである。現在、シラバスは年度始めに册子を学生に渡しているが、今後は大学の公式ホームページなどにも公開することが必要である。

 文化研究科目のシラバスは今まで、授業の進め方、評価の方法などについての記述は担当教員に一任してきたが、今後は討論やレポートを学生に課すなどの方法についても学科としてある程度の統一を図ることが望ましい。
3. 学生による授業評価の導入状況
 学年末に、中国語学科独自に1〜3年次生に対して、会話・講読授業に対するアンケートを行ってきた。主な項目は、授業の難度とその原因分析、教材、進度、教員の説明、課題等の適否であり、同時に習熟度別クラス編成についてもアンケートを過去3年間にわたって実施したが、新しい教材や制度が受け入れられていることがわかったので、現在は休止している。

 授業評価アンケートは、会話・講読授業の教材を統一し、なおかつクラスを習熟度別に編成することになったので、その適否や効果を測定するために実施した。結果は私たちの導入した制度について学生たちも基本的に理解していることが明らかとなり、同時に不満や問題点も浮かび上がってきたので、実施した価値はあったと考えている。
このアンケートは、現在は休止しているが、将来必要とあらば再度行うこともある。その際には項目の見直しも必要になろう。
5)日本語学科
1. 学修の活性化と教育指導方法の改善
 教員各自のクラスでの指導方法の改善は、各教員個人の研究心によるわけだが、日本語学科では、教員それぞれが学習の活発化のために、授業が単なる講義に終わることなく、クラスが教員と学生の相互能動的な (interactive) クラスになるようにと心掛けている。つまり、学生参加型である。また、これまで学科カリキュラムの日本語教育の教育実習に不十分な点があったのだが、それを改善すべく計画を立てているところである。更に、学生の興味にも視点を置き、彼等の希望を調査し、将来のカリキュラムに出来る限り取り入れて行こうと考えている。学習の活発化のための各教員の取り組み方は適切と判断される。教育実習と学生のカリキュラムに対する希望受け入れの現状評価は、今後の状況を見定める必要がある。教育実習については、本学の日本語教育センターの協力を得なければならない。幸にして、日本語教育センター長は、本学科の兼任教授でもあり、非常に貴重な指導が受けられるはずである。また、カリキュラムに対する学生の希望受け入れに関しては、平成15年6月に行った学生に対するアンケート調査の結果を重視する。
2. シラバスの適切性
 現在開講されている各科目のシラバスは、各担当教員の努力により、年度を追って洗練されつつあり、科目ごとの適切さを実現している。但し、個々の学生が必要とする学習内容を漏れなく履修できるためには、開講される科目の内容が相互に連係し、体系的に整えられることが望まれる。日本語学科は平成13年度に完成年度を迎え、学生に対して卒業までの間に提供される学習内容とその効果の評価が現実的に行いうる段階に達している。すでに、日本語教育に関する科目についての検討を行い、学年ごとの履修科目とそれぞれのシラバス内容の配分修正に着手しているが、他の領域についても、検討の余地があると思われる。既に上記の検討を行うため、教員による小委員会の設置などの方策に着手している。
3. 学生による授業評価の導入状況
 個々の教員でそれぞれのコースの学期末に、自由記述形式、あるいはアンケート形式によって、学生からの授業評価を行うようにしている。アンケートの質問は、コース目標が達成できたかどうか、その目標は適切なものであったかどうか、教材の適切性、講義が役に立ったかどうか、などの観点から学生の評価を問うものである。回答は、教員が各自集めて授業改善に役立てている。

 上記のアンケート形式での授業評価法の良い点としては、授業外に無記名で行っているため、成績評価には影響しないと学生に判断されやすく、学生の率直な意見が述べられることが多い。教員が自分の気づいていない点の指摘があるなど、授業改善に役立つことがある。反面、無記名なため、熱心に授業に参加した学生の意見なのか、いい加減に参加している学生の意見なのか、ただ読んだだけでは判断できないことが問題点として挙げられる。これには学生自身の授業参加度を自己評価させる項目を作って記入させるなどの改善方法があるであろう。アンケートによる授業評価の場合にはその質問の内容を改善したり、アンケートの結果を学生に還元するなどの改善が必要と思われる。その他、コースの最初と最後に、コース目標やその達成度、教材の是非、学習速度などの観点から学生と教員が直接話し合う機会を設けるのも一つの方策かと思われる。

 教科内容に関する学生の感想・希望については、これまでに、履修内容に関するアンケートを実施した他、各教員が随時クラス内で調査を行うなどの方法で把握を試みているが、臨時的なものに留まっている。今後、調査項目を精選し、定期的に調査を行うことが望まれる。なお、学生の希望や意識する必要性は、客観的に見て適切であるとは限らないことも考慮し、一方的なアンケート調査のみでなく、教員・学生間の双方向的な意見交換の機会を設けることも有効であると推測される。