自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>>第3章第4節(6)教育方法とその改善

教育研究の内容・方法と条件整備

第4節 日本語教育センター(留学生別科)

(6)教育方法とその改善

1)教育効果の測定
 日本語集中コースではコーディネーターが各自のクラスの教育上の効果に対しては常に注意を払っている。具体的には非常勤講師との綿密な連係によって忌憚のないフィードバックを収集しており、また、授業内外で学生からもフィードバックを収集している。

 現在はプログラム開始時より各クラスのコーディネーターと担当の非常勤講師の顔ぶれがほぼ一定してきたため、コーディネーターと担当の非常勤講師間のラポートができあがってきた。そのため、忌憚のない意見が収集できていると考える。そして、そのフィードバックの検討と非常勤講師との話し合いにより、効果の高いものについては継続し、或いは強化し、効果の低いものについては代替案を取り入れて、常に改善するというスタンスを取っている。

 英文入門日本学コースでは、プログラム終了時に学生にアンケートを実施しており、そのアンケートも踏まえて改善している。日本文化実習科目もプログラム終了時に学生にアンケートを実施し、好評であったり、効果があったものは、場合によっては回数を増やす等して継続し、不評であったものは打ち切って他のものを入れるという形で毎年改良を重ねている。

 全体的には、教師間、また教師と学生間で意見の交換がしやすい状態を維持するための時間を、今後も積極的に取る必要があると考えている。
2)厳格な成績評価の仕組み
 日本語集中コースの評価は各クラスのコーディネーターが評価割合を決定し、非常勤講師も積極的に評価に関与する。評価割合はクラスによって異なるが、各時間は公平に扱われる。例として、平成14年度春学期日本語IVクラスの文法科目(週6時間)を挙げると、その評価割合は、「出席10%、授業参加度10%、小テスト(4回)20%、中間テスト30%、期末テスト30%」であり、これがIVクラスの全体評価の40%として計算されている。このように各教員が責任を持って担当科目の評価を行い、それらを総合したものが学生の最終的な成績となる。英文入門日本学コースは各科目の担当教員によって評価がなされる。

 また、日本文化実習科目は学期末にレポートを提出して審査を経るか、或いは上記の英文入門日本学コースの中の英文入門日本学B-2を履修し合格することにより単位認定がなされる。

 このような成績評価法及び成績評価基準の適切性は妥当なものであると考える。非常勤講師を含めた各教員が評価を担当することにより、学生が常に緊張感を持って授業に望んでいると思われ、今後もこのような形で継続することが望ましいと考えている。
3)履修指導
 日本語集中コースにおいては、学生の入学時点での日本語力を多角的に調べ、学生本人の意向や将来の目的をよく聞いた上で、当人の性格や学習スタイルも踏まえて、もっとも効率よく学習できるクラスに配属、このような履修に関する指導・配慮を学期毎に行っている。各クラスの責任者である専任教員はそれぞれオフィスアワーを設け、学生の個人的な問題にいつでも対処できるような体制をとっている。このような点から、現時点の状況で十分履修指導が行われていると思われる。

 英文入門日本学コースは選択科目であるため完全に学生の自由選択に任されており、現状では制度的に履修指導の余地が与えられていないが、講義要項を充実させることにより科目選択をしやすいように配慮している。

 しかし、このコースは、いずれも日本人学生が履修するコースであるため、日本人学生に対する履修指導と日本語教育センター留学生への履修指導の両方が必要とされる。更に、英文入門日本学コースのいくつかは、本学以外の学生が履修できる単位互換のコースであるため、そのことも踏まえた履修指導が望まれる。今後、このコースのコーディネーターを設けて、コースの内容の向上と質の均等性を保つと同時に、教務課と連携を取りながら受講生への履修指導の在り方も検討中である。

 日本文化実習科目においては、必修プログラムであるため、特別な履修指導の必要はないが、強いて言えば必要参加時間数の確保を確実にさせることである。

 以上に加えて、昨年度までは、短期交換留学生としてセンターに所属する大学院留学生の大学院のコースの履修指導を日本語教育センターが行ってきたが、今年度からは、その留学生を全員、大学院特別聴講学生として受け入れることになったため、履修指導の責任が大学院コミュニケーション研究科に移された。
4)教育改善への組織的な取り組み
1. 学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善
 日本語教育センターでは、学生のレベルおよびニーズに合わせて、授業内容(シラバス)、授業形態の双方において柔軟に対応しており、学生の学習意欲を削ぐことなく、個々の学生の到達度を上げつつ、クラス、延いてはプログラム全体の活性化を図っている。教員の教育指導方法に関しては、各クラス内で連絡連携を密に取り合って、複数の教員が一つのクラスを担当するチーム・ティーチングの欠点を補うだけではなく、逆にその長所を生かそうと、日々、検討工夫を重ねている。
2. 学生による授業評価の導入状況
 2003年春学期に、初めて学生によるコース評価をさせた。それは、文記入式で、学習者の母語で書いてもいいことになっている。何人かの学生が母語で書いた評価は判読しづらく、また、質問内容の吟味および評価内容の考察がなされていなかった。
 今後は、結果をデータの形で残し、吟味するために、コース評価をオンライン上で行うようにし、また、結果が数値化できるよう、質問を検討しているところである。

表1 日本語プログラム概要
レベル 主 教 材 補助漢字教材 コーディネータ 備  考
1 初級前半 『みんなの日本語I』
『初級日本語げんきI』
主教材付属のもの 徳本浩子  
2 初級後半 『みんなの日本語II』
『初級日本語げんきII』
『日本語中級読解入門』
主教材付属のもの
3 初中級 初級復習(受身形、使役形、敬語、その他)と中級への導入『J Bridge』ほか 『Basic Kanji Book Vol.1』復習 村上かおり 初級後半の復習が必要な受講生はレベルIIIへ、定着度の高い受講生はレベルIVへ。
4 中級前半 『日本語中級J301』
『文化中級日本語I 』
『Basic Kanji Book Vol.2』
5 中級後半 『日本語中級J501』
『文化中級日本語 II 』
『Basic Kanji BookVol.2 』
(後半)から中級漢字教材へ
中島和子  
6 上級 『日本語中級J501』生教材 『Intermediate Kanji Book Vol.1』
7 超上級 『論文ワークブック』
生講義・生教材
なし 中島和子  
『みんなの日本語』 (スリーエーネットワーク 1998)/『初級日本語げんき』 (The Japan Times 1999)
『日本語中級読解入門』 (アルク 1991)/『J Bridge』 (凡人社 2002)
『文化中級日本語I 』 (凡人社1994)/『文化中級日本語II 』 (凡人社 1997)
『日本語中級J301』 (スリーエーネットワーク 1995)/『日本語中級J501』 (スリーエーネットワーク 1999)
『Basic Kanji Book』Vol.1 & 2 (凡人社 1990)/『Intermediate Kanji Book 漢字1000 Plus Vol. 1改訂版』 (凡人社 1996)

表2 英文入門日本学コース
  コース名 担当講師 単位 春学期 秋学期
1 Introduction to Japanese Culture and History Douglas K. Wilkerson 2  
2 Literary Traditions in Contemporary Japan Douglas K. Wilkerson 2  
3 Japanese Society and Modern Education Michelle H. Morrone 2  
4 Introduction to Japanese Sociolinguistics 高士京子 2  
5 Topics in Japanese Sociolinguistics 高士京子 2  
6 Introduction to Japanese Economy, Business and Management Style 竹内昭夫 2
注:○は開講

表3 日本文化実習プログラム
小旅行 伊勢、奈良、京都、広島、瀬戸、長浜他
見学 トヨタ自動車工場、味噌工場、名古屋港、産業ロボット、からくり人形他
鑑賞・観劇等 雅楽、歌舞伎、相撲、盆梅他
講義 日本史、茶道、広島(旅行事前学習)、陶芸、伝統演劇他
体験 陶芸、茶道、華道、弓道、料理、和菓子、友禅染、有松絞り、温泉、防災他
注:英文入門日本学コース1(Introduction to Japanese Culture and History)履修の学生は、日本文化実習に出席することで各学期1単位取得できるが、英文入門日本学コース1を履修しない学生は、学期末にレポートを提出し、審査を経て1単位が取得できる。