第2節 国際経営学部
(13)厳格な成績評価の仕組み
1) 履修科目登録の上限設定
履修科目登録制限は、共通科目、本学部の専門科目、全学開放科目/他大学開講科目がある。
1. 共通科目
共通科目は、1セメスター3科目までという履修登録制限規定が設けられている。既に1年次から専門科目の履修も始まっているため、その学習に負担とならないようにという狙いがある。更に共通科目18単位という必要単位数を、1・2年次でバランスよく取得するという狙いもある。
2. 専門科目
3・4年次のACE・BEは1セメスター2科目8単位、総計4科目16単位以内という上限設定を設けている。これも各セメスターでバランスよく英語科目を履修し、他の専門科目の履修に影響させないという配慮からである。
3. 全学開放科目/他大学開講科目
全学開放科目は、カリキュラム設定から本学部カリキュラムの科目系列の必要単位数から逆算して、総計で12単位以上とることはできない。また他大学開講科目は規定によってセメスター3科目6単位以内という登録上限が設定されている。更に全学開放科目と同様の理由により、総計で12単位以上は取得することはできない。こうした規定はあくまでも本学での学修が基本となるべきであって他大学・他学部の授業の履修はその妨げにならない限りにおいて認められるという考え方によるものであり、以上の履修登録の上限設定は妥当なものと考える。
2) 成績評価法、成績評価の基準の適切性
1. 成績評価基準について
これは全学共通の基準に従っており、以下(別表9)のようになる。
国-別表9 成績評価基準(全学共通)
評価表示 |
試験点数 |
試験結果 |
単位認定の可否 |
A+ |
90〜100点 |
合格 |
認定 |
A |
80〜89点 |
B |
70〜79点 |
C |
60〜69点 |
D |
0〜59点 |
不合格 |
不認定 |
E |
試験欠席 |
|
F |
失格 |
|
成績は本学共通の基準により100点満点で測定されるが、表示はアルファベットで行われる。即ち、A+は90点以上、Aは80点以上90点未満、Bは70点以上80点未満、Cは60点以上70点未満、Dは60点未満、Eは試験欠席、Fは教育効果測定の機会(例えば学期末試験)への参加を認められないという意味での失格である。A+、A、B、Cまでが、当該科目の単位を認定されるが、D、E、Fは単位が認定されない。なお、単位互換における単位認定、大学以外の教育施設等での学修(認定留学、検定試験)の単位認定、入学前の既修得単位の認定、特別な科目(海外研修)は、単位が認められた場合、S(認定)という評価を付している。
こうした評価規定は妥当であると考えているが、この規定のもとどのような基準に従って評価が実際になされているかである。共通科目については、既に外国語学部の該当部分で既述されているので、ここでは本学部の科目系列毎に成績評価法、評価基準の現状を見てみる。
まず、ゼミナール科目であるが、その成績評価は原則として授業中の積極的な参加度とレポート作成などにより、英書講読ゼミナールでは、それに加え試験によっても行われる。専門ゼミナールは4年次の最終学期においては卒業論文を課すゼミナールもあり、それによって評価が行われることがある。なお、これに関して国際経営学部の特長として、「卒業記念論文選抜制度」を設けていることがあげられる。各ゼミナール一論文を原則として学生が応募した論文の中から優秀なものを選抜し、学部として表彰する制度である。
専門科目であるが、まず専攻語学である英語科目おいては、成績評価は授業中の積極的な参加度、会話や筆記の授業時におけるテスト、様々な機会に課せられる課題作成(レポート)、更に学期末のテストなどによって判定される。CEは6つの分野の統合された科目としてあるから、各クラス担当教員の成績評価を集め、総合的に評価を行っている。ACE/BEは各クラス担当教員が評価を行う。その他の専門科目は全て講義科目であり、出席状況の確認、中間テスト、レポート提出、学期末試験などによって成績評価が行われている。
いずれの系列も全体として、それぞれ妥当な基準に従って成績評価が行われていると言えよう。但し、各評価の基準については担当教員に任されており、CE以外は個々の教員が評価を下すのだが、学生から見て所謂「甘い」評価と「厳しい」評価が混在する可能性がある。受講者に対して出すA+以下の各成績のパーセントを大枠決めておく相対評価の必要性もかつて論議されたが、現在のところ学部として検討されてはいない。相対評価を導入するか否かに関わらず、成績評価の厳密性、客観性についての論議は常に必要であろう。
なお、本学部においてはGPAを行なってはいない。また、新学部においても今のところ、その予定はない。しかし、海外留学がいっそう増加する傾向にあることから、成績評価の国際性という点からも検討されねばならないだろう。今後の課題である。
CEについては、6名の教員の評価を総合して最終的な成績評価を出すため、一人の教員の極端な評価があった場合、6単位全体に影響を及ぼす危険がある。従って、一層成績評価基準の統一が行われる必要がある。しかし従来は必ずしも十分な統一が行われていたとは言えない。各クラスの成績評価をどのように行うかが各教員に任されている面が大きかった結果、CE内の同一科目であってもあるクラスでは期末のテストが行われたかと思えば、別のクラスではそれがないといった事態が生じていたのである。そのためCEでは2004年度からCE内の各科目についてそれぞれ専任教員がコーディネーターとなって教員間の連絡・授業内容と成績評価の統一にあたることとなった。
また、現代国際学部では、CEのような異なる教員の担当による複数クラスの成績を総合して成績評価を行うという形態ではなく、あくまでも各クラスの教員による個別評価がそのまま成績評価となるという仕組みを導入した。従って、既設の国際経営学部、新設の現代国際学部いずれにおいても現在のCEが成績評価に関して抱えている問題は改善されると思われるが、しかし、必修科目を複数の教員が担当し、成績評価を行う以上、成績評価の基準の統一性への配慮がやはり必要となるだろう。そのためにも、各科目を専任教員がコーディネーターとなって内容・評価の統一性の実現を図るという方向性がさらに徹底されねばならないだろう。
2. 各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方法の適切性
各年次及び卒業時の学生の質を確保するために、本学部は2つの制度を設けている。一つは英語科目のCEにおける段階学習制であり、もう一つは、3年次の専門ゼミナールにおける履修要件である(別表参照)。CEは統合科目であり、6単位一括で履修しなければならない。IIからIVまでのCEは全てその前段階を履修しておくことが前提となっている。各段階のCEを修得できなかった学生は次年度に同じ段階を再履修しなければならない。こうした仕組みによって、それぞれの段階のCEを受講する学生の質が確保されている。
専門ゼミナールは3・4年次、同一教員によって2年間の一貫指導を受ける必修科目である。したがって、これが履修できないことは、自動的に卒業年次が遅れることを意味し、一種の留年規定となっているともいえる。この専門ゼミナールを履修するための要件は基礎ゼミナールを修得していること、英書講読ゼミナール1あるいはのいずれかを修得していること、CEIIを修得していること、2年次末の総修得単位が30単位以上であること、以上の4つである。
国-別表10 専攻語学およびゼミナール科目の履修の前提条件
|
科目 |
左の科目履修の前提となる科目 |
専攻語学 |
Communicative English I |
|
Communicative English II |
Communicative English I |
Communicative English III |
Communicative English II |
Communicative English IV |
Communicative English III |
Advanced Communicative English A~G |
Communicative English IV |
Business English 1・2 |
ゼミナール科目 |
専門ゼミナールI |
次の1.〜4.のすべてを修得する。
1.基礎ゼミナール
2.英書講読ゼミナール1または2
3.Communicative English II
4.2年次末の総修得単位30単位以上
ただし、複数の専門ゼミナール科目を
同時に履修することはできない。 |
専門ゼミナールII |
専門ゼミナールIII |
専門ゼミナールIV |
ところで、こうした仕組みに問題がないわけではない。
CEの段階制は各段階の学生の質を確保するためには必要な措置であるが、他方、すでに本章第1節「教育課程」において述べたように、この制度が逆に学生の学習意欲をそぐ結果になるのではないか、という危惧ももたれている。そのため改善策として、これもすでに述べたように、新設の現代国際学部では、段階制を思い切って廃止することとした。
専門ゼミナール履修のための4つの要件に関しては、こうした要件を設けることによって学習意欲にかける学生が専門ゼミナールを履修することを妨げるという意味では必要であるとも考えられる。が、現代国際学部では専門ゼミナールは選択科目になるので、履修要件が学生の質を確保するという観点からは意味をなさなくなる。そのため、卒業時の学生の質を確保するため、あらたにTOEFL450点かTOEIC550点かのいずれかを取得することを卒業要件とすることとした。
3. 学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
現在、国際経営学部としてこうした仕組みとして実施されているものとしては、主に以下のものがある。英語スピーチコンテスト、TOEFL統一テスト、卒業記念論文、教員文集『知への誘い』の刊行
- 英語スピーチコンテストは、英米語学科との共催という形で実施されているが、毎年本学部学生も積極的に参加し、好成績を挙げている。今後とも質・量ともに充実した形での参加が継続することが期待される。
- TOEFL統一テストは、2003年度より主に本学部1年生を対象に実施している。2002年4月にまずITPテストとしてPre-TOEFLテストを実施したが、その後むしろ正式のTOEFLテストと同じ内容に方がよいという判断のもとに、2003年度末にFull-TOEFLという形態でITPテストを実施することとした。1年生は全員、2年生以上は希望者を対象に実施する。これは留学希望者にとっても活用できるテストであるので、好評である。今後この制度を継続すべきであると考えるが、しかし、2年生以上にとっては就職対策としてはTOEICテストも有効なので、その活用も考えるべきであろう。いずれにせよ、こうした統一テストによって学生は主観的な形でだけではなく、客観的に自己の英語能力の伸びを確認できるので、その学習意欲を刺激する上ではきわめて有効であろう。
- 卒業記念論文
本学部は卒業論文を単位化しているわけではないが、卒業要件として卒業論文の作成を設けている専門ゼミナールがある。また卒業要件でなくとも卒論作成を勧めている場合もある。従ってこうした学生の学習意欲を刺激するために、本学部では「卒業記念論文」という形で、その年度の卒業論文で優秀なものを選び、卒業式当日に表彰する制度を設けている。指導教員を主査とし、さらに副査による審査と、学部の審査委員会による審査を受けて毎年十数名が選ばれ表彰されている。卒業論文作成という形での学修を刺激する上で極めて有効であると考えられるが、しかし問題点もないわけではない。学部として論文マニュアルが作成されていないため、まちまちの形態で論文が提出されるなど、指導教員の指導任せになっている面があり、今後の改善が必要であろう。さらに十数名の選出が名称に相応しいのか、より少数の論文のみを選ぶために審査をより厳格化するべきではないのか、といった意見もあり、今後検討が必要であろう。
- 教員文集『知への誘い』の刊行
これは、教員が個人的な体験談を交えながら、勉学の面白さはどこにあるのか、あるいはどのような方向で勉学を進めるべきかなどを記した教員の文章を集めたもので、文字通り教員側からの学生への「知への誘い」のための文集となっている。
当初、2002年4月に『知への招待』と題して刊行されたものであるが、2003年12月に『知への誘い』と題も改め、新たな文章も加えた。本学部学生全員に配布し、ゼミナールなどでも用いられている。教員との個人的な触れ合いを通じて学生がある分野に関心を持って勉学に励むようになる、という経験は稀ではない。教員を知り、親しみを感じることが学習への入り口になっていることがしばしばあるのである。その意味で教員紹介をも兼ねたこの種の文集は、学生の学習意欲を刺激するものとして意義があるといえるだろう。
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