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ホーム > 学長の活動 > ドナルド・キーン先生との対談「私と外国語」

ドナルド・キーン先生との対談「私と外国語」



2013年10月30日(水)東京外国語大学にて、ドナルド・キーン先生の講演後、対談が行われました。

10月30日(水)東京外国語大学にて、東京外国語大学名誉博士であるドナルド・キーン先生による講演「私と外国語」および、名古屋外国語大学長であり、東京外国語大学前学長である亀山郁夫先生との対談が行われました。東京外国語大学の教室にも映像が配信され多くの学生が聴講しました。参加者はホール・教室を合わせて662名を数え、大変盛況でした。
まずは、ドナルド・キーン先生が「私と外国語」というテーマで講演をし、日本語を中心に外国語を研究してきたご自身の経験、太平洋戦争時に日本兵が書いた日記との出会い、日本語に対する想いなどを述べていただきました。

亀山郁夫先生と対談

亀山前学長によるキーン先生の自伝の朗読(『私と20世紀のクロニクル』最終章「八十四歳、「老齢」を楽観する」)を交えながら、様々な対話が行われました。亀山先生は「日本語を愛すると同時に初めて日本人の心に触れた」と述べたキーン先生に対して「日本人の精神、心の奥にあるコアのようなものは何でしょうか」と問いました。

キーン先生は、日本人の自然に対する愛情や人間性、家族への想いなど現在も太平洋戦争時も変わらずに根底にある日本人の精神について見解を述べました。また、それらの精神は、日本文学における普遍的なものにも通じ、原文・翻訳に関わらず感じることができると、源氏物語を例に言及しました。

それを受けて亀山先生は、翻訳の本質について議論を進め「翻訳の本質に関わるお話しだと思います。私もロシア文学を翻訳していますが、日本語で読んだ時のほうがはるかに感動できるものがあります。翻訳だから感動が減るわけではないし、原文で読まないと作品のコアの部分がつかめない、理解できないということはありません。おっしゃるとおりです。ただし、言葉を超えて文学を理解するためには読む側の力、『empathy:共感力』が必要ではないかと思います。他者の世界の中に入っていこうとする力があれば、言葉を超えて理解できると思います」と語りました。

キーン先生は「共感力」を得るために必要なことは「たくさんの本を読むこと」であると述べ、「私はホメロスからゲーテまで読み、大変自分のためになりました。それらが積もって今の自分になったと思います。その中には日本のものも多く含まれています。日本国籍をとりましたが、自分が、日本人らしいか、アメリカ人らしいか、返事に困ります。今、アメリカに行ったらむしろ外国だと感じると思います」と話しました。

亀山先生も「私もソビエト時代にある音楽を聴いて、自分の心は本当はロシア人になっているのではないかと思ったことがあります。他者の文化に深く入っていくと、他者の文化が自分の心を奪い取って、自分がどこの国の人間でもないような、またはその国の人間であるような気分になります」と、研究を通してロシアと関わってきた経験を例に挙げながら、外国語を研究したり外国文学を翻訳することの意味について考察し、意見を述べました。