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11月15日 『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』フランス人作家、オリヴィエ・ゲーズ講演会を開催しました




2018年11月15日、13時20分〜14時50分、701教室にて本学フランス語学科とアリアンス・フランセーズ愛知フランス協会との共同企画による「『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』をめぐって」が、オリヴィエ・ゲーズ氏(作家)と西里扶甬子氏(ジャーナリスト)を迎えて開催されました。

開催のご報告

オリヴィエ・ゲーズ(フランス人作家)

 『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』はフランスで2017年に出版され、権威のあるルノド賞を受賞したオリヴィエ・ゲーズ氏の小説です。今回は東京創元社から日本語版の発売を記念してのイベントとなりました。この歴史小説は、ナチスの親衛隊医師だったヨーゼフ・メンゲレがアウシュビッツで残酷な人体実験を行った後、偽名を使い南米に逃亡し、ブラジルで海水浴中に謎の死を遂げるまでを描いています。ジャーナリストでもあるゲーズ氏は4年にわたりドイツと南米で取材を行い、この小説を書き上げました。講演では、この小説は共同脚本も手がけた映画『アイヒマンを追え』ともう一つの翻訳されていない自作の小説とともにヨーロッパの「戦後」を描く三部作として描いたこと、フランス人としてよりも戦後生まれのヨーロッパ人として描いたと述べていました。
 対談相手のジャーナリストの西里扶甬子さんは海外経験も長く、ドイツの国営放送のプロデューサーとしてドキュメンタリーの制作などにも参加されてきた方で、80年代に森村誠一著の『悪魔の飽食』で存在が知られることになった日本のアウシュビッツと呼ばれる旧満州国ハルビンにも詳しい方です。彼女は、母方がドイツ系であるゲーズ氏に、なぜ当時のドイツ人はヒトラーにあれほどまでに熱狂したのか、戦争中の日本の状況と類似する部分はあるのかという質問をされました。ゲーズさんの答えは、1919年のヴェルサイユ条約での賠償金請求や1929年の世界恐慌などから引き起こされたインフレなど1930年代のドイツは戦争を選択せざるをえないような状況下にあったが、なぜ当時の人々がヒトラーという「挫折した画家」に熱狂していったのかは合理的には説明できない、というものでした。またフロアからの「イエルサレムのアイヒマン」でのアーレントの見解についての意見を求められると、ゲーズ氏は、アイヒマンは実際にはホロコーストの責任者であったにもかかわらず、逮捕後は罪を逃れるために組織の歯車であったかのように振る舞い、アーレントはその演技の罠にはまった可能性があると指摘し、自分は彼女とは違う意見を持っているとも語りました。

西里扶甬子
(ジャーナリスト/
元ドイツ国営放送ZDFプロデューサー)

会場の様子

 一般の方々も多く聴きに来てくださり、重いテーマであるにもかかわらず、学生の反応も良く、講演後のサイン会では用意された本がすべて売り切れていました。200人弱の聴衆の中には外国人留学生の姿もちらほら見られ、大変成功した講演会でした。今後も作家イベントを続けていこうという思いを強く抱きました。
(伊藤達也)

開催案内

 アウシュビッツの「死の天使」、ヨーゼフ・メンゲレの半生を描き、ルノド賞を受賞したフランス人作家オリヴィエ・ゲーズ氏の講演会です。
 アウシュビッツ収容所の主任医官であったヨーゼフ・メンゲレは、第二次大戦中にユダヤ人特に双子の子供への人体実験を行ったことで知られますが、戦後はアルゼンチンに逃亡。イスラエルによるアイヒマン逮捕以降も、南米各地を転々としながら、偽名で生活を続け、1979年心臓発作により海水浴中にブラジルで死亡しました。
 小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』は、ヨーロッパと南米での長期の調査にもとづき、この「死の天使」メンゲレの生涯を描きだし、フランスで権威あるルノド賞を受賞しました。本講演会では著者本人から本作執筆にまつわる話を伺うほか、日本のアウシュビッツと言われている731部隊に詳しい西里扶甬子氏との公開対談を行います。講演後はサイン会が予定されています。

 どなたでも参加できます。事前申し込みは不要ですので、当日直接会場へお越しください。

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概要

演 題 『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』フランス人作家、オリヴィエ・ゲーズ講演会
講演者 オリヴィエ・ゲーズ(フランス人作家)
西里扶甬子(ジャーナリスト/元ドイツ国営放送ZDFプロデューサー)
開 催 主 催: 名古屋外国語大学フランス語学科
後 援: ワールドリベラルアーツセンター、創立30周年記念事業委員会
日 時 2018年11月15日(木) 13:20~14:50
会 場 名 称: 701教室≪名古屋外国語大学7号館≫
所在地: 〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57
会場へのアクセスについて
※駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。
対 象 どなたでも無料でご参加いただけます。
その他 事前申し込みは不要です。当日、直接会場へお越しください。
問合せ先 名古屋外国語大学 0561-74-1111(代表)

講演者紹介

オリヴィエ・ゲーズ Olivier GUEZ  (フランス人作家)

 1974年フランス、ストラスブール生まれ。ストラスブール政治学院、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ブリュージュ・コレージュ・ド・ヨーロッパで学んだ後、ニューヨーク・タイムズ、ル・モンド、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥンクなどに寄稿するジャーナリストとして活躍。『アイヒマンを追え、ナチスが最も恐れた男』(2015年)共同脚本。執筆に3年を費やした2作目の小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』(高橋啓訳、東京創元社、2018年)でルノド賞受賞。

特別ゲスト紹介

西里扶甬子 Fuyuko NISHISATO  (元ドイツ国営テレビZDFプロデューサー)

 北海道大学卒業、北海道放送入社、報道部を経て、オーストラリア放送(ABC)、ロンドン滞在後帰国。海外メディアのコーディネーター/リサーチャー、2001 年より2016 年までドイツ国営放送(ZDF)プロデューサー、著書に「生物戦部隊731」アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪(2002 年 草の根出版会)他。