2018年10月26日(金)16:40~18:30、本学5号館1階511教室において、プレシンポジウム「カタストロフィの想像力とロシア文化」を開催し、当日は学内外から145名の方にご参加いただきました。
司会は本学英米語学科教授 梅垣昌子先生が務め、来場された多くの方が先生方のお話に興味深く聞き入る姿が印象的で、関心の高さが伺えました。
司会は本学英米語学科教授 梅垣昌子先生が務め、来場された多くの方が先生方のお話に興味深く聞き入る姿が印象的で、関心の高さが伺えました。
開催のご報告
講演:平野啓一郎氏(作家)
10月27日(土)、28日(日)に同じく本学にて催されました、日本ロシア文学会 第 68 回(2018 年度)定例総会・研究発表会に先立って開催された今回のプレシンポジウムでは、冒頭、日本ロシア文学会会長の三谷惠子氏からご挨拶いただき、次いで作家 平野啓一郎氏から「カタストロフィと小説」と題してご講演いただきました。カタストロフィとは何か、小説家の考えるカタストロフィと人間との関係を、さまざまな具体例や比較を交えながらお話しいただきました。
亀山郁夫(名古屋外国語大学学長)
中澤敦夫先生(富山大学教授)
乗松享平先生(東京大学准教授)
その後のシンポジウムでは、幅広い専門分野をもつロシア文学研究者3名から、それぞれお話を伺いました。亀山郁夫先生(名古屋外国語大学学長)からは、いくつかのドストエフスキー作品の中でのカタストロフィに関する表現について、中澤敦夫先生(富山大学教授)からは中世ロシアにおける終末思想に関する研究について、ご報告いただきました。最後に、乗松享平先生(東京大学准教授)より、ロシア・西欧・日本における歴史の変化の差異についてお話しいただきました。
司会:梅垣昌子先生
(本学英米語学科 教授)
会場の様子
開催案内
日本ロシア文学会と名古屋外国語大学の共催による プレシンポジウム「カタストロフィの想像力とロシア文化」を開催します。
二極化、独裁、ネオナショナリズム、「ポスト真実」、反知性主義など、
グローバリゼーションの進展のなかで世界は今さまざまな危機に瀕している。
地球温暖化による環境破壊、異常気象が私たちの生活を直撃し、不吉な予感を掻き立てている。
他方、AI、ビッグデータによって人間の存在様式そのものも著しい変容を遂げ、
ポストヒューマンの思想も台頭しつつある。
そうした状況のなかで、人文学は、文学は、小説は、何ができるのか。
ロシア文化の立ち位置とはどのようなものか。
現代社会を代表する作家の一人平野啓一郎氏の講演を軸に、
ロシア文学・文化の研究者が熱く語る。
どなたでも参加できます。
二極化、独裁、ネオナショナリズム、「ポスト真実」、反知性主義など、
グローバリゼーションの進展のなかで世界は今さまざまな危機に瀕している。
地球温暖化による環境破壊、異常気象が私たちの生活を直撃し、不吉な予感を掻き立てている。
他方、AI、ビッグデータによって人間の存在様式そのものも著しい変容を遂げ、
ポストヒューマンの思想も台頭しつつある。
そうした状況のなかで、人文学は、文学は、小説は、何ができるのか。
ロシア文化の立ち位置とはどのようなものか。
現代社会を代表する作家の一人平野啓一郎氏の講演を軸に、
ロシア文学・文化の研究者が熱く語る。
どなたでも参加できます。
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概要
タイトル | プレシンポジウム「カタストロフィの想像力とロシア文化」 |
ゲスト | 平野啓一郎、亀山郁夫、中澤敦夫、乗松亨平 |
開 催 | 共 催: 日本ロシア文学会、 名古屋外国語大学(創立30周年記念事業委員会、ワールドリベラルアーツセンター) 協 力: 日本ドストエフスキー協会 |
日 時 | 2018年10月26日(金)16:40~18:30 |
会 場 | 名 称: 名古屋外国語大学 5号館1階 511教室 所在地: 〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57 会場へのアクセスについて |
申 込 | 準備の都合がありますので、事前のお申し込みをお願いいたします。 申込みのフォームに必要事項をご入力・送信してください。 ※参加申込の受付は先着順とし、定員になり次第、締め切ります。 https://req.qubo.jp/wlac/form/20181026 2018.10.26プレシンポジウム「カタストロフィの想像力とロシア文化」参加申込みフォーム |
対 象 | 名古屋外国語大学学生、教職員、一般市民など どなたでも参加できます |
その他 | 参加無料 |
問合せ | 名古屋外国語大学 TEL:0561-74-1111(代表) |
記念講演
平野啓一郎(作家)
1975年、愛知県生まれ。1歳で父を亡くし、18歳まで福岡県北九州市に住む。京都大学法学部在学中、「新潮」に一挙掲載された小説『日蝕』でデビュー、第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。その後、『決壊』(08年)で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『ドーン』(09年)でドゥマゴ文学賞、『マチネの終わりに』(16年)で、渡辺淳一賞などに輝く。現代文明に対する独自の視点から政治、社会問題への発言も多く、その小説の多くが、鮮烈な問題意識に貫かれているが、その一方で、純古典的とも呼ぶべき様式の長編小説も手掛ける。今年作家デビュー20周年を迎え、長編小説『ある男』が話題となっている。
1975年、愛知県生まれ。1歳で父を亡くし、18歳まで福岡県北九州市に住む。京都大学法学部在学中、「新潮」に一挙掲載された小説『日蝕』でデビュー、第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。その後、『決壊』(08年)で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『ドーン』(09年)でドゥマゴ文学賞、『マチネの終わりに』(16年)で、渡辺淳一賞などに輝く。現代文明に対する独自の視点から政治、社会問題への発言も多く、その小説の多くが、鮮烈な問題意識に貫かれているが、その一方で、純古典的とも呼ぶべき様式の長編小説も手掛ける。今年作家デビュー20周年を迎え、長編小説『ある男』が話題となっている。
シンポジウム
亀山 郁夫(ロシア文学、名古屋外国語大学学長)
「20世紀以降の世界においてドストエフスキー文学がはらむ現代性を《カタストロフィ》をキー概念として考察することの意味を説明し、今後のドストエフスキー研究の可能性について提言を行いたい。キー概念は、《災厄》《終末》《危機》《悲劇》の4つ。実例として、『罪と罰』のエピソードで描かれるラスコーリニコフの「繊毛虫」の夢や、ヴォルテール『キャンディード』が『カラマーゾフの兄弟』の執筆に与えた影響を挙げる」
【プロフィール】1949年生。東京外国語大学卒業、東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。東京外国語大学名誉教授。主な著作として、『甦るフレーブニコフ』『磔のロシア』『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』、主な訳書ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』他。
中澤 敦夫(ロシア文学、富山大学教授)
「キリスト教の本源にかかわる《終末》の問題は、正教をよりどころに思索してきた中世ロシアの知識人にとっても主要な主題の一つだった。とりわけキリスト教受容の初期、創世6000年紀末、教会分裂期などの危機の時代には、《終末》が広く知識人をとらえ、彼らは歴史や生のあり方について強い現実感をもって思索を繰り広げた。報告では、ロシア中世の終末思想の特質について検討しつつ、その現代における系譜についても考える」
【プロフィール】1954年生。上智大学卒業、一橋大学大学院博士課程単位取得満期退学、ロシア連邦ロシア文学研究所文学博士。主な訳書として、リハチョフ『中世ロシアの笑い』(共訳)、グレーヴィチ『同時代人の見た中世ヨーロッパ』(共訳)他。17年、ドミートリー・リハチョフ賞受賞。
乗松 亨平(ロシア文学、東京大学准教授)
「ロシアはその歴史上、外国の侵攻や革命などのカタストロフィにくりかえし見舞われてきた。ユーリー・ロトマンはそれを《爆発》と呼び、《爆発》によりすべてが反転する二極的構造としてロシア史を特徴づけた。ただ、このような見方はロシアに限定されるものではない。美術批評家の椹木野衣は『震美術論』で、定期的なカタストロフィ=地震による破壊が日本文化を特徴づけると論じた。カタストロフィをナショナルな特徴とみなすこれらの論について、そのゆえんと意味を考えたい」
【プロフィール】1975年生。東京大学卒業、東京大学大学院博士課程終了(博士)。主な著作として、『リアリズムの条件―ロシア近代文学の成立と植民地表象』、『ロシアあるいは対立の亡霊:「第二世界」のポストモダン』、主な訳書として、ヤンポリスキー『隠喩・神話・事実性』(共訳)他。
「20世紀以降の世界においてドストエフスキー文学がはらむ現代性を《カタストロフィ》をキー概念として考察することの意味を説明し、今後のドストエフスキー研究の可能性について提言を行いたい。キー概念は、《災厄》《終末》《危機》《悲劇》の4つ。実例として、『罪と罰』のエピソードで描かれるラスコーリニコフの「繊毛虫」の夢や、ヴォルテール『キャンディード』が『カラマーゾフの兄弟』の執筆に与えた影響を挙げる」
【プロフィール】1949年生。東京外国語大学卒業、東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。東京外国語大学名誉教授。主な著作として、『甦るフレーブニコフ』『磔のロシア』『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』、主な訳書ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』他。
中澤 敦夫(ロシア文学、富山大学教授)
「キリスト教の本源にかかわる《終末》の問題は、正教をよりどころに思索してきた中世ロシアの知識人にとっても主要な主題の一つだった。とりわけキリスト教受容の初期、創世6000年紀末、教会分裂期などの危機の時代には、《終末》が広く知識人をとらえ、彼らは歴史や生のあり方について強い現実感をもって思索を繰り広げた。報告では、ロシア中世の終末思想の特質について検討しつつ、その現代における系譜についても考える」
【プロフィール】1954年生。上智大学卒業、一橋大学大学院博士課程単位取得満期退学、ロシア連邦ロシア文学研究所文学博士。主な訳書として、リハチョフ『中世ロシアの笑い』(共訳)、グレーヴィチ『同時代人の見た中世ヨーロッパ』(共訳)他。17年、ドミートリー・リハチョフ賞受賞。
乗松 亨平(ロシア文学、東京大学准教授)
「ロシアはその歴史上、外国の侵攻や革命などのカタストロフィにくりかえし見舞われてきた。ユーリー・ロトマンはそれを《爆発》と呼び、《爆発》によりすべてが反転する二極的構造としてロシア史を特徴づけた。ただ、このような見方はロシアに限定されるものではない。美術批評家の椹木野衣は『震美術論』で、定期的なカタストロフィ=地震による破壊が日本文化を特徴づけると論じた。カタストロフィをナショナルな特徴とみなすこれらの論について、そのゆえんと意味を考えたい」
【プロフィール】1975年生。東京大学卒業、東京大学大学院博士課程終了(博士)。主な著作として、『リアリズムの条件―ロシア近代文学の成立と植民地表象』、『ロシアあるいは対立の亡霊:「第二世界」のポストモダン』、主な訳書として、ヤンポリスキー『隠喩・神話・事実性』(共訳)他。