2018年1月27日(土)13:30~17:30、本学7号館地下1階701教室及びコミュニケーションプラザにおいて、ワールドリベラルアーツセンター主催シンポジウム/コンサート「村上春樹とカズオ・イシグロ その世界性、読解の可能性をめぐって」を開催しました。
開催のご報告
今回のイベントには、189名の方にご参加いただきました。
シンポジウムでは、村上春樹氏と、2017年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の作品を通して、登壇者4名それぞれの立場からのお話を伺いました。参加いただいた方の中には、村上春樹氏、カズオ・イシグロ氏の小説のファンの方や、登壇された先生方の翻訳を読まれたことのある方も多く、参加者からの質問の場面では、その知識の深さや意識の高さに先生方も驚かれるほどでした。会場を移して開催されたコンサートでは、尾崎有飛先生のピアノ演奏を楽しみました。
シンポジウムでは、村上春樹氏と、2017年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の作品を通して、登壇者4名それぞれの立場からのお話を伺いました。参加いただいた方の中には、村上春樹氏、カズオ・イシグロ氏の小説のファンの方や、登壇された先生方の翻訳を読まれたことのある方も多く、参加者からの質問の場面では、その知識の深さや意識の高さに先生方も驚かれるほどでした。会場を移して開催されたコンサートでは、尾崎有飛先生のピアノ演奏を楽しみました。
シンポジウム会場の様子
シンポジウム(前半・701教室)
シンポジウムの前半では、それぞれの先生方から、順にお話しを伺いました。
鴻巣友季子先生(批評家)
鴻巣友季子先生からは「巨人は深く埋められているかー“メッセージ”の沈潜と浮上」と題して、主にカズオ・イシグロ氏の作品を通しての考察を伺いました。カズオ・イシグロ氏は、自身の作品の読者が、イギリス英語を母語とするイギリス人だけではないことを意識している点に注目し、それが「世界文学」に近づく一つの方法とお話されました。
梅垣昌子先生(本学教授)
続いて、梅垣昌子先生からは「カズオ・イシグロの語り」と題して、2017年のノーベル賞を受賞した氏の、これまでの作品に一貫してみられる語りの技法の存在を「レール」になぞらえ、『日の名残り』を例に作品の中の語りの構造、語られる内容、語る方法などについて、お話いただきました。今後、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロがどうなっていくのか、氏の「旅」を見てみたい、同じレールの上から、また別の風光明媚な景色を見せてくれるのか、と次作への期待についてもお話いただきました。
清水良典先生からは「ハルキ・ムラカミのメタファー通路」と題し、村上春樹氏とカズオ・イシグロ氏の共通点や相違点を挙げて、それぞれの魅力についてお話いただきました。村上春樹氏の作品が世界で読まれていることについては、現代人の中にコミュニケーションが欠乏しているのではなく、強制されているかのような重圧の中で、自分にだけ届くコミュニケーションを待ち望んでおり、自分に語り掛けているような気持にさせるからこそ、世界中の読者の心に届くのではないか、という考察を伺いました。
清水良典先生(愛知淑徳大学教授)
最後に、亀山郁夫学長からは「ドストエフスキーの影」と題して、両氏の作品の設定や登場人物にみる、ドストエフスキーの影響についてお話いただきました。村上氏は、これまでの人生で巡り合ったもっとも重要な本のひとつとしてドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』を挙げ、イシグロ氏も尊敬する作家としてその名を挙げています。ドストエフスキー研究を続けてきた亀山先生ならではの視点から、それぞれの作品の共通点や類似点を通して、両氏の作品についてのお話を伺いました。
亀山郁夫先生(本学学長)
シンポジウム(後半・701教室)
シンポジウム後半の様子
休憩後のシンポジウムの後半では、前半の各登壇者の発表を聞いた来場者の方から寄せられた質問にお答えいただきました。
鴻巣先生のお話の中で挙げられていた「世界文学」ということばに関連した「世界文学」全集についての質問に対しては、河出書房新社の『世界文学全集』(池澤夏樹 個人編集)をご紹介いただき、一般的に欧米諸国の作品に偏ることの多い世界文学全集の中でも、アジアやアフリカ諸国の文学も選ばれているなど、全集としてのその特徴や魅力を教えていただきました。
鴻巣先生のお話の中で挙げられていた「世界文学」ということばに関連した「世界文学」全集についての質問に対しては、河出書房新社の『世界文学全集』(池澤夏樹 個人編集)をご紹介いただき、一般的に欧米諸国の作品に偏ることの多い世界文学全集の中でも、アジアやアフリカ諸国の文学も選ばれているなど、全集としてのその特徴や魅力を教えていただきました。
コンサート(コミュニケーションプラザ1階)
会場をコミュニケーションプラザ1階に移して開催された尾崎有飛先生のコンサートにも、たくさんの方にご参加いただきました。ピアニストで昭和音楽大学 助教の尾崎先生からは、演奏だけでなく楽曲についてご紹介を行っていただき、コンサートの最後には、本イベントの開催日がモーツァルトの誕生日ということで、予定されていなかった楽曲もご披露いただきました。
尾崎有飛先生
(ピアニスト、昭和音楽大学助教)
コンサート会場の様子
開催案内
グローバル時代の進行、 AIの劇的進化にともない、現代文学のシーンには大きな変化が生まれようとしている。他方、今や世界を代表するともいえる日本生まれの二人の作家、村上春樹とカズオ・イシグロに新たな脚光が当てられている。いずれも、その独自のイメージ世界と卓越した物語構築力によって世界の文学ファンの心を深く揺さぶりつづける作家だが、世界文学の今後の動きを探るうえで一つの大きな指針となると思われる。本シンポジウムでは、よきライバル同士とされる彼ら二人の作品を比較しながら、21世紀の現代世界における読解の可能性を探りたい。
PDFファイルをご覧になるためには、AdobeReader® が必要です。パソコンにインストールされていない方は右のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。
タイムテーブル(予定)
13:00 | 開場 | (シンポジウム会場:701教室) |
13:30 | 開会の辞 | 梅垣 昌子(司会) 村上春樹、カズオ・イシグロ プロフィール紹介 |
13:45 | 講演 | 鴻巣 友季子 「巨人は深く埋められているか"メッセージ"の沈潜と浮上」 梅垣 昌子 「カズオ・イシグロの語り」 清水 良典 「ハルキ・ムラカミのメタファー通路」 亀山 郁夫 「ドストエフスキーの影 村上春樹とカズオ・イシグロ」 |
15:30 | 討論 | |
休憩・会場移動 | (コンサート会場:コミュニケーションプラザ1階) | |
16:45 | コンサート | 尾崎 有飛 ♪リスト「『巡礼の年』より」 ♪ラフマニノフ「プレリュード 23−5」 ♪ストラヴィンスキー「ピアノソナタ1番」 ♪バッハ「われ汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」 ♪リスト「メフィストワルツ」ほか |
17:30 | 閉会の辞 |
パネリスト プロフィール
鴻巣 友季子 (こうのす・ゆきこ)
翻訳家。英語圏の現代作家の作品を翻訳、紹介すると同時に、古典文学の新訳にも力を注ぎ、文芸評論も手がける。主訳書:クッツェー「恥辱」、ブロンテ「嵐が丘」、ミッチェル「風と共に去りぬ」(全5巻)、ウルフ「灯台へ」、ポー「E・A・ポー」(編訳)。主著書:「カーヴの隅の本棚」、「熟成する物語たち」、「全身翻訳家」。毎日新聞書評委員。新潮新人賞、アガサ・クリスティー賞選考委員。
翻訳家。英語圏の現代作家の作品を翻訳、紹介すると同時に、古典文学の新訳にも力を注ぎ、文芸評論も手がける。主訳書:クッツェー「恥辱」、ブロンテ「嵐が丘」、ミッチェル「風と共に去りぬ」(全5巻)、ウルフ「灯台へ」、ポー「E・A・ポー」(編訳)。主著書:「カーヴの隅の本棚」、「熟成する物語たち」、「全身翻訳家」。毎日新聞書評委員。新潮新人賞、アガサ・クリスティー賞選考委員。
梅垣 昌子 (うめがき・まさこ)
大阪府出身。名古屋外国語大学教授(アメリカ文学)。京都大学博士課程単位取得満期退学。主な論文「フォークナーと11 人の語り手たち」(フォークナー11号)「フォークナーの十字架 『永遠の戦場』への出兵と帰還」(ALBION57)など、共著『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』(松籟社)、『北米の小さな博物館 知の世界遺産』<1><2><3>(彩流社)など。
大阪府出身。名古屋外国語大学教授(アメリカ文学)。京都大学博士課程単位取得満期退学。主な論文「フォークナーと11 人の語り手たち」(フォークナー11号)「フォークナーの十字架 『永遠の戦場』への出兵と帰還」(ALBION57)など、共著『ウィリアム・フォークナーと老いの表象』(松籟社)、『北米の小さな博物館 知の世界遺産』<1><2><3>(彩流社)など。
清水 良典 (しみず・よしのり)
1954年、奈良県生まれ。立命館大学卒。文芸評論家・愛知淑徳大学教授。第33回群像新人文学賞評論部門を受賞。2012年中日文化賞を受賞。主な著書に『2週間で小説を書く!』、 『MURAKAMI 龍と春樹の時代』、『あらゆる小説は模倣である。』、『増補版 村上春樹はくせになる』、『デビュー小説論』など。
1954年、奈良県生まれ。立命館大学卒。文芸評論家・愛知淑徳大学教授。第33回群像新人文学賞評論部門を受賞。2012年中日文化賞を受賞。主な著書に『2週間で小説を書く!』、 『MURAKAMI 龍と春樹の時代』、『あらゆる小説は模倣である。』、『増補版 村上春樹はくせになる』、『デビュー小説論』など。
亀山 郁夫 (かめやま・いくお)
1949年、栃木県生まれ。名古屋外国語大学学長。ロシア文学者。2002年に「磔のロシア」で大佛次郎賞、2007年に翻訳「カラマーゾフの兄弟」で毎日出版文化賞特別賞。2012年には「謎解き『悪霊』」で読売文学賞受賞。ドストエフスキーの新訳では他に「罪と罰」「悪霊」がある。2015年、自身初となる小説「新カラマーゾフの兄弟」を刊行。
1949年、栃木県生まれ。名古屋外国語大学学長。ロシア文学者。2002年に「磔のロシア」で大佛次郎賞、2007年に翻訳「カラマーゾフの兄弟」で毎日出版文化賞特別賞。2012年には「謎解き『悪霊』」で読売文学賞受賞。ドストエフスキーの新訳では他に「罪と罰」「悪霊」がある。2015年、自身初となる小説「新カラマーゾフの兄弟」を刊行。
尾崎 有飛 ピアノ・コンサート
プログラム
♪リスト「『巡礼の年』より」
♪ラフマニノフ「プレリュード 23−5」
♪ストラヴィンスキー「ピアノソナタ1番」
♪バッハ「われ汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」
♪リスト「メフィストワルツ」ほか
尾崎 有飛(おざき・ゆうひ)
プロフィール
ハノーファー音楽演劇メディア大学修了、ドイツ国家演奏家資格取得。アリエ・ヴァルディ氏、江口文子氏に師事。国内外の数々のコンクールで受賞。ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、オーストリア、スロヴェニア、国内各地で数多くの音楽祭出演やリサイタルを行う。2016年より昭和音楽大学助教。
概要
タイトル | 村上春樹とカズオ・イシグロ その世界性、読解の可能性をめぐって |
開 催 | 主 催: 名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター 共 催: 日本ドストエフスキー協会 |
日 時 | 2018年1月27日(土) 13:30~17:30 (13:00開場) |
会 場 | 名 称: シンポジウム…701教室≪名古屋外国語大学 7号館地下1階≫ コンサート …コミュニケーションプラザ 所在地: 〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57 会場へのアクセスについて バス時刻表は、1月22日から春季ダイヤに変更となります。 イベント開催日は、春季ダイヤでの運行予定ですので、ご注意ください。 |
バス運行について | 1月17日現在、12時台は下記の通り運行の予定です。 【春季ダイヤ】 上社駅発 12時 05、20、35、50 (分) 赤池駅発 12時 20、50 (分) |
申 込 | 当日参加も可能ですが、準備の都合がありますので、事前のお申し込みをお願いいたします。 申込みのフォームに必要事項をご入力・送信してください。 https://req.qubo.jp/wlac/form/20180127 2018.01.27「村上春樹とカズオ・イシグロ」参加申込みフォーム |
対 象 | どなたでも参加できます |
その他 | 参加無料 |
問合せ | 名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター TEL:0561-75-2164 E-mail:wlac_gg@nufs.ac.jp |