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12月11日「先住民族としてのアイヌの文化と権利」を開催しました



 2017年12月11日(月)16:40~18:30、本学7号館701号室において、世界共生学科主催講演会「先住民族としてのアイヌの文化と権利」を開催しました。
 なお、本講演会は2017年4月に発足した世界共生学科による初の主催企画として開催され、当日は83名の方にご来場いただきました。

開催のご報告

 開催に先立ち、小野学科長よりご挨拶をいただきました。
 多文化共生社会の中で、本学の「世界共生」の目指すものと、セレンディピティ(偶然の出会いから発見されるもの)についてお話されました。

会場の様子

世界共生学科長 小野展克教授

今回、さまざまな偶然があって、アイヌに関する本学での講演会を開催できるということ、そしてこの講演会から、何か新しいものを生み出すことができれば、と期待を語られました。

亀山郁夫学長

地田徹朗准教授(司会)

 続いて、亀山郁夫学長から開催のご挨拶を頂きました。
 このテーマをめぐって、世界共生学科が主催して講演会を開催することを大変喜ばしく感じ、自身もロシアを専門としてきた中で、関係の深いテーマでもあるので、楽しみにしているとお話されました。また、小野学科長からのご挨拶を受けて、偶発的な出会いを大切に、そして自ら、そういった偶然の出会いを求めていけるようになることが、大事なのではないかとお話されました。
 本講演会の司会は、世界共生学科の地田徹朗准教授が務めました。
山崎幸治氏「モノからみるアイヌ文化」
 講演の冒頭では、1904年にアメリカのセントルイス万博でのサンゲアさん(万博に「展示」として参加したアイヌ民族の男性)の言葉を例に、自分たちとは違う文化の人たちへの感じ方についてご紹介されました。
 そして、アイヌ工芸の魅力、アイヌ工芸の近現代について、写真を多く使ったプレゼンテーションでご紹介いただきました。アイヌ工芸の魅力として、「素材をたのしむ」「形をたのしむ」「個性をたのしむ」そしてその文化的、歴史的な背景をキーワードとして、お話いただきました。

山崎幸治氏

山崎幸治氏

 アイヌ民族は大きく分けて千島アイヌ、樺太アイヌ、北海道アイヌの3つに分けられます。それぞれの民族工芸には異なる特徴があり、コートひとつとっても、その材料は魚の皮や、アザラシや鳥の皮など、その環境に合ったもので作られていることが分かります。また本州の日本人の大半は、アイヌと本土(本州)との関係性に注目しがちではありますが、アラスカのエスキモーの文化と比較すると類似することも多く、その文化の繋がりについてもご紹介いただきました。衣類の他にも、食器等の器類、美しい幾何学模様のゴザや、お祈り際に使用する道具など、さまざまな美しい工芸をご紹介いただきました。
 また、全てのものに魂がある、と言われるアイヌの世界観についてもお話いただきました。「熊送り」や、「モノ送り」などの儀式、そしてその世界観と工芸品の装飾性の高さの関係もご紹介いただきました。
 最後に、近現代のアイヌについてお話頂き、北海道観光の土産物としての発展や、アイヌ文化振興法などアイヌ文化に関連した法律についてもご紹介いただきました。
阿部千里氏「先住民族と多文化共生の理想の姿」
 アイヌ・先住民族電影社の代表を務め、自身もアイヌである阿部千里氏からは、先住民族とは何か、先住民族がいる社会がどうあるべきかについて、お話を伺いました。
 自身のアイデンティティについて考えるきっかけとなった出来事として、大学時代のアメリカ留学での「異なる他者」との接触を挙げ、その時から自分とは何なのかを考えるようになった、ということで、留学経験者や留学を予定している学生が多いこともあり、参加した学生の多くが興味深く聞き入っていました。アイヌ、北海道での植民地政策の歴史、そして先住民族とは何かについて、ご自身の立場からの捉え方、受け止め方を交えながらお話いただきました。
 阿部氏は、先住民族自身が主体となって自らの権利を決めてゆくということを謳う「先住民族の権利に関する国連宣言」に日本も賛成票を投じているにもかかわらず、アイヌについての現実はその内容に追いついておらず、あくまで「権利」をベースとして日本のアイヌ政策を再構築すべきだと主張されました。
 多民族共生、多文化共生の社会では、個人には多角的にものを見る力が重要であり、誰もが生きやすい社会にするためにもその力が重要であるとお話されました。

阿部千里氏

コメント
 コメンテーターとしてご参加いただいた濱嶋聡先生からは、ご自身の専門分野であるアボリジニ研究の立場からお話しをいただきました。濱嶋先生は、アボリジニの多様なあり方や語りを、彼らのロジックから記述することを解く、「ラディカル・オーラル・ヒストリー」が今後のアイヌ研究のあり方にも通じるところがあるのではないかとの問題提起を行い、また、アボリジニは生物にも非生物にも魂が宿ると考えられており、「ドリーム・タイム」と呼ばれるある種の「掟」としてのアボリジニの歴史実践のあり方、これらがアイヌと共通しているのではないかということについて言及しました。

世界共生学科
濱嶋聡教授
(コメンテーター)

質疑応答の様子

 最後に、質疑応答の場面では、来場者からの質問にそれぞれお答えいただきました。フロアからは、日本の先住民族政策の取り組みが諸外国と比べて大きく遅れていることの理由、2020年開設予定の国立アイヌ民族博物館におけるアイヌの主体性、阿部先生が紹介した先住民族についての4つの映画にアメリカ映画なかったこととアメリカでの先住民族政策との関係性など多くの質問が出され、非常に充実したディスカッションとなりました。

工芸品展示
 本講演会を開催するにあたり、当日もご参加いただきました一般の方より、アイヌ工芸品の実物をお貸出し頂きました。
ありがとうございました。

会場外に展示したアイヌ工芸品

会場の外に展示したアイヌ工芸品

参加した方のご感想

 両講師のご意見を興味深く聴かせていただきました。このようなセミナーの「共生」という全世界的に大切なテーマを、私たちは常に考えて平和社会保持に努めなければならないと、思いを深めた次第です。(70代・女性)
 先住民族を描く映画をこの機会に観てみようと思う。先住民族についてよく考えさせられるテーマであった。(60代男性)
 アイヌの文化や民族に関心があったので参加しました。興味深いテーマでためになりました。ボランティアサークルで多文化共生について考えていたのですが、今回の講演を聞き、多面的に物事を考えることの重要さを改めて感じることができました。(世界教養学科 学生)

開催案内

 日本における多文化・多民族共生を考える上で欠かすことのできない、先住民族としてのアイヌの文化とアイヌの人びとの権利をめぐる問題。この度、アイヌ文化を専門とする文化人類学者の山崎幸治先生と、アイヌの先住民族としての権利の問題に取り組んでいる阿部千里先生を北海道からお招きしてご講演いただきます。また、コメンテーターとして、アボリジニの言語権の問題について長年研究をされている、本学科の濱嶋聡先生にご登壇いただき、お話を伺います。

 どなたでもご参加いただける講演会ですので、下記参加申し込みフォームへのリンクからご登録いただき、ふるってご参加ください。

PDFファイルをご覧になるためには、AdobeReader® が必要です。パソコンにインストールされていない方は右のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

講演者・演題 山崎 幸治(北海道大学アイヌ・先住民研究センター/准教授)
 「モノからみるアイヌ文化」
阿部 千里(アイヌ・先住民族電影社/代表)
 「先住民族と多文化共生社会の理想の姿」
開会挨拶 小野 展克(本学 世界共生学部・世界共生学科長/教授)
司 会 地田 徹朗(本学 世界共生学部・世界共生学科/准教授)
コメンテーター 濱嶋 聡(本学 世界共生学部・世界共生学科/教授)
開 催 主 催: 名古屋外国語大学世界共生学科
共 催: 名古屋外国語大学ワールドリベラルアーツセンター
日 時 2017年(平成29年)12月11日(月) 16:40~18:30
会 場 名 称: 701教室≪名古屋外国語大学7号館 地下1階 大講義室≫
所在地: 〒470-0197 愛知県日進市岩崎町竹ノ山57
会場へのアクセスについて
対 象 どなたでも参加できます
申 込 当日参加も可能ですが、準備の都合がありますので、事前のお申し込みをお願いいたします。
申込みのフォームに必要事項をご入力・送信してください。
「先住民族としてのアイヌの文化と権利 」参加申込みフォーム
その他 参加費無料
問合せ先 名古屋外国語大学世界共生学部世界共生学科
愛知県日進市岩崎町竹ノ山57
TEL:0561-75-2886(学科事務室直通)
E-mail:collabo_joshu_gg@nufs.ac.jp (担当:地田・藤沼)