第2節 学部及び大学院の教育目標
(3)大学院国際コミュニケーション研究科
高等教育の高度化は世界の趨勢であり、日本の社会でも、この数年来、大学院教育の充実を求める傾向が一段と強まっている。研究機関、高等教育機関、国際機関は言うまでもなく、民間でも大学院レベルの知識を必要とする職種が増え、また中学校・高等学校の教員でも修士号を持つ専修免許取得者が優遇される状況になっている。本学の学生の間にも大学院進学希望者が年を追って増加しており、平成9年4月の大学院「国際コミュニケーション研究科」開設は、この社会的要請と向学心に富む学生諸君の希望に応えるものであった。
とりわけ、本研究科は研究者養成とともに、特に現代国際社会で活躍する高度な専門知識を持った職業人の育成を目的としていると同時に、学部として設置されている外国語学部及び国際経営学部の両者に共通の大学院として従来型の大学院にないユニークな特色を併せ持つ。
本研究科は現代社会をコミュニケーションの観点から総合的に捉え、国際的に活躍できる能力の涵養を目的とする。従って教育課程における科目構成は、外国語学部の言語別学科編成とは相補的な学際性を特徴する。
外国語の知識が常識となった国際化時代にあって、専門家にはさらに高度な言語能力が求められる。その上に広い専門的知識やコミュニケーションに必要な国際感覚がないと活躍できなくなっている。「国際コミュニケーション研究科」は、言語を中心において、国際理解に必要な知識を総合的に研究・教授する機関であり、この在り方は将に、名古屋外国語大学の教育理念を高度に具現化したものと言ってよい。
他の外国語大学の大学院の多くは、一つの言語とその背景にある文化の研究を中心とした、例えば「英米文化専攻」「フランス語学専攻」のように、学部学科割の上に専攻を設けている。しかし本大学院は、そのような個別文化の研究を十分に尊重しつつも、個別主義原理による専攻編成を排し、2学部5学科の横断的、総合的、学際的展望を重視して、専攻は「国際コミュニケーション専攻」1つとし、自由な履修を可能にする。これはグローバリゼーションが急速に進む世界の現状に対応しうるための基本方針である。
また、過去を振り返る歴史的研究を無視するわけではないが、外国語大学に設置される大学院として、現代世界に活躍の場を求めるための「生きた知識」に焦点を合わせている。
しかしながら、異文化理解、国際問題に不可欠な基礎は、特定の言語、その背景にある文化、社会、その形成の歴史、また政治、経済、文学、宗教といった各学問分野の着実な研究であって、それを軽視して高度な総合的研究はありえない。国際コミュニケーション研究科は総合性・学際性を特徴とするが、基礎となるのはこの基本的研究であることに些かの異論もない。また、当然、それらの分野の専門家の養成は重要な目的である。対象領域の複雑さは、入学者の多様な希望に対応できる弾力的で幅広い構成をとっているためである。
1)博士前期課程
前期課程は、外国語学部と国際経営学部の両者に共通の課程として開設され、学部段階での学習課程を考慮し、そのカリキュラムは英語、フランス語、中国語、日本語を中心に国際関係、国際ビジネス、言語情報と広範な分野に跨っている。そのため、履修が散漫になることを防ぎ、専攻分野及び就職先をより明確にすることを意図して、専攻に以下の7コースを設置している。
英語コミュニケーションコース/日本語コミュニケーションコース/フランス語コミュニケーションコース/中国語コミュニケーションコース/国際関係コース/国際ビジネスコース/インターネット言語教育コース
2)博士後期課程
後期課程は、前期課程の基礎の上に立って、その中心となる「英語学・英語教育学」「日本語学・日本語教育学」の両分野に加えて、言語科学と文化研究を中心とし、フランス語や中国語、或いは国際経営分野や国際関係分野を中心に学習してきた学生の多様な知的関心にも対応し得る「国際文化」の3分野にわたり、専門性の高いカリキュラムと教育体制を整備して、高度な専門的職業人、教育者及び研究者の養成を目的としている。また、本研究科の特色である総合性・学際性を損なわぬよう配慮しつつ、研究指導を中心に、特定の分野について深い専門的研究能力を涵養し、それらの知識を実社会で実践できる高度な学識を養成することを研究指導の指針としている。 |