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名古屋外国語大学に対する加盟判定審査結果
ならびに認証評価結果

I 評価

 評価の結果、貴大学は本協会の大学基準に適合していると認定する。
したがって、2005(平成17)年4月1日付で正会員への加盟・登録を承認する。
認定の期間は2010(平成22)年3月31日までとする。

II 総評

1 理念・目的・教育目標の達成への全学的な姿勢

 言語文化、国際ビジネスの各分野を通じて、「異文化間の相互理解を進展させ、国際社会の中で世界規模で貢献し得る人材育成」という理念のもとに東海地区で唯一の外国語大学として、国際化・情報化・個性化の時代に対応した教育目標を掲げ、1988(昭和63)年の開業以来16年間で堅固な地歩を築いてきた。大学財政の厳しい折り、外国語教育で少人数授業を推進するというポリシーを堅持し、それを実践している教育姿勢を評価したい。

 現在の諸状況に対し、英語・フランス語・中国語を用いて対応する能力を備えた学生、院生の育成という教育目的は理解できるし、これを目標として教育・研究活動が行われていることも評価できるが、学生に対しては「外国語」大学として言語を専門としている以上、言語そのものが内包する体系性への深い理解と、言語が生み出す文化への広い理解を身につけるという点を理念に掲げることも必要となろう。

 国際経営学部は、「国際ビジネスの分野において活躍できる人材を育成するという理念のもと」、1994(平成6)年に開設された。当該学部は「国際」という冠がついているだけでなく、外国語大学ということから外国語重視という特色は注目されてよい。このことは「専攻語学」に象徴されているように、教育課程にも反映されており、グローバル化を目指した学部として十分に評価できる。それゆえにといえるかもしれないが、当該学部の「経営」の弱さが目立つことも否定できない。開設して10年間の経験を踏まえ、2004(平成16)年度に「現代英語学科」と「国際ビジネス学科」を擁する「現代国際学部」が発足しているが、それぞれの学科の特徴を明確にしていく必要があろう。同時に外国語重視という特色が継承しつつ「経営」の柱となる「国際ビジネス学科」がどのように発展していくのか見守る必要がある。

 なお、学校法人中西学園により設置されている貴大学の日進キャンパスには、同法人により名古屋学芸大学と愛知女子短期大学が設置されており、キャンパス・アメニティが充実している反面、共用利用する施設については、その不足が生じないよう配慮する必要がある。

2 自己点検・評価の体制

 自己点検・評価委員会が設置され教育活動の活性化のためのアンケート調査の実施や、それに基づくFD(ファカルティ・ディベロップメント)委員会の設置がなされてきた。しかし、これまでの活動は主として教育の改善に向けられていて、大学全体で本格的な自己点検・評価活動は行なわれてこなかったように見受けられる。今回の自己点検・評価報告書においても、教育プログラムの設定が上記の明確な理念・目的を遂行するに十分であるのか否かは読み取ることができなかった。さらに、上記の各種のアンケートも「学生自身の自己評価」、「学生の勉学態度の評価」という色彩が強いようである。もちろんこういう視点も必要ではあるが、「学生による授業の評価」を見ることも必要であろう。

 自己点検・評価委員会の委員構成を見るとメンバーの大半が役職員となっている。若手の教育や事務職員を委員に加えることも検討に値しよう。また、自己点検・評価委員会の部局別委員会の一つに「大学院点検・評価実施委員会」の名があるが、今回の点検・評価では大学院の実態を十分把握することはできなかった。今回大学基準協会に提出された「自己点検・評価報告書」を基礎に、全学的、継続的な自己点検・評価活動へと結び付けていくことが必要であろう。

3 長所の伸張と問題点の改善に向けての取り組み

(1)教育研究組織
 学部・学科のほかに、国際コミュニケーション研究所、日本語教育センター、メディア情報教育センターを設置している。しかし、規模の小さい大学であるため、それぞれに人員が十分の配置できないのは苦しいところであろう。特に、国際コミュニケーション研究所は設置されてまだ歴史が浅いためか、大学院の高度な教育と研究に資する役割を担う域には達していないので、今後活発な研究活動が期待される。
なお、今回の評価対象にはならなかったが、2004(平成16)年4月に国際経営学部を改組して設置された現代国際学部の今後の成果に期待したい。
(2)教育内容・方法
 外国語大学として、小規模のクラスサイズと語学教育重視という教育方針を堅持し、実践してきた姿勢は高く評価できる。特筆すべきは、両学部において実施されている3名の学生に1名のネイティブ教員を配置して語学教育を行うPower-up Tutorialという授業形式で、この方式は高く評価できる。入学者の日本語運用能力を十全なものにするために、大学で必要とされる日本語の読解力、表現力、論理的思考力を訓練する基礎ゼミを全員に課していることも1つの見識として評価できる。

 大学院においては、コミュニケーションを鍵概念として、2学部5学科を横断する総合的な国際コミュニケーション研究科を設置して統合した大学院プログラムを展開しているはユニークである。修士課程を基礎にして、「英語・英語教育学」「日本語・日本語教育学」および「国際文化」という3分野に限定した博士課程を設置したことも、総花的にならずに妥当である。ただし、「国際文化」の分野は修士課程における英語教育と日本語教育以外の5コースの修了者向けの受け皿としては、あまりに間口が広すぎるであろうか。配置教育に偏りがあるためか、学生の専攻が日本語教育に集中しているというアンバランスも多少是正する必要があろう。また、特に英・仏・中コミュニケーションコースに関して、学際的なカリキュラムを目指すことは適切ではあるが、大学院としての研究・教育の面でやや焦点が定まりにくいように見受けられる。

 海外の大学との国際交流は盛んに行われており、国際交流協定を締結している海外の40大学のうち28大学と学生の交換を実施し、学部全体で44名の派遣交換留学生および10名の認定留学生を派遣している。また、大学院においても外国人留学生を修士課程で10名、博士課程で3名それぞれ在籍させている点も評価できるが、せっかくの留学生制度を院生も大いに利用できるよう配慮すべきであろう。外国語大学でもあり、両学部からの派遣留学生および海外からの外国人留学生の数を今後も増加させ続けることが期待される。

 なお、2002(平成14)年度から愛知県下45大学が参加する単位互換制度に参加しているが、他大学生の受け入れ人数および貴大学生の他大学への参加人数がともに少ない。立地条件による制約はあるものの、参加人数増加のためになんらかの方策を検討することが望まれる。
(3)学生の受け入れ
 入試選抜基準の恒常的な検討および選抜方法の透明性の確保では成果を挙げているが、入学定員に対して入学者数がやや多いために、外国語大学としては収容定員に対する在籍学生比率が高めになっている。少人数教育を推進する大学の方針を実行する際にこの点が障害とならないかが危惧される。

 国際社会で活躍できる人材を育成することを基本理念としている貴大学で、学生に多様な異文化経験をさせるためにも、数多くの留学生あるいは通常の入学者の年齢とは異なる社会人を入学させる手立てをさらに積極的に構ずべきであろう。

 定員割れを起こす大学院が多い中で修士課程における収容定員を超える在籍学生数を確保しているが、十分な教育・研究指導を行うという観点からは収容定員の1.38倍という在籍学生数は少し人数が多すぎる感がある。また、前期課程については、受験者数・入学者数がほぼ安定しているが、後期課程では年々減少しているので、この理由を探って是正につとめる必要がある。
(4)学生生活
 「キャリアアップ講座」など正課において就職支援を行い就職内定率も全国水準を上回っている。給付、貸与の種別を別にすれば、奨学金を希望する学生はほぼ全員何らかの形で受けているので、経済的支援も適切であると判断される。

 院生については、研究活動を支援するために、在学期間1回に限り、研究費補助制度がある。また、全国規模の学会および国際学会への積極的な参加を奨励するために、研究旅費制度を完備して、毎年5〜6名に対して補助が行われている点は評価できる。

 ただし、セクシュアル・ハラスメントについては、事故発生後の対応を重視しているが、事故発生前の予防を心がけた体制を整備しておく必要があろう。保健師の数が少なく、しかも学生課との兼任で配置されているが、学生数から見て不十分であろう。
(5)研究環境
 教員が毎月1回全員による研究会を開催し、各自が研究状況を報告して他の教員からコメントを受けている点は評価できる。ただ、教育を充実させるには活発な研究活動が不可欠であるとの認識にたって、「研究活動の活性化を図る」という目標を立ててはいるものの、必ずしもそれが実現されているとは言い難い。科学研究費補助金申請の件数が少ない点にもそれが現れている。教員の研究活動状況を把握し、研究業績の質を検証するシステムを早急に構築することによって一層の活性化が望まれる。

 研究条件の整備については、一定期間外国に教員を派遣する派遣研究員制度、国際研究集会派遣制度、および研究叢書刊行助成制度等が整備され、活用されている点は評価できる。サバティカル・リーブ制度も整備されているが、2000(平成12)年度以降派遣者がゼロであることから、制度をいかに活用していくかが今後の課題である。研究支援のための各種制度がせっかく整備されているのであるから、これらが広く活用され、教員の研究活動の活性化に資することが期待される。
(6)社会貢献
 地域の英語教育の能力向上を支援しようとして、貴大学への留学生のホームスティ受け入れ、市と連携した共済事業の開催等、積極的な活動を実施しようとしている点については評価できる。また、現職教員の再教育が叫ばれている昨今、「英語教育ワークショップ」が1回の開催(3日間)で終わってしまうのはもったいない。色々克服すべき問題点もあろうが、1回を5日間ぐらいに、そして年間複数回開催できれば、貢献度もさらに高まるであろう。また、経営関係の教員による地域貢献を行うことが望まれる。
(7)教員組織
 専任教育1人あたりの在籍学生数、教員の年齢構成もほぼ妥当であり、客員教育制度の採用も充実している。特に、本大学で最もユニークな科目であるPower-up Tutorialに関して、その担い手としての外国人チューターの存在は大きい。

 一方で、教育の募集を公募制でなく推薦制にしているのは、発足してから年月の浅いこの大学としてはしかたがないかもしれないが、広く人材を求める、また教員採用の透明性を高める点から、公募制の導入も検討する必要があろう。また、大学院担当の可否の審査基準やその運用について今後点検・評価を進める必要もある。
(8)事務組織
 2学部を擁する大学にしては事務職員の数が少ないように感じられるが、現在の大学運営に支障がないか点検・評価する必要がある。また、貴大学みずから「男女共同参画の推進を図り女性職員の登用を積極的に進める」ことを目標としているのであるから、女性職員の比率が高いにもかかわらず、管理職に就いているものがとても少ないことについては改善が望まれる。
(9)施設・設備
 名古屋市東部に位置し、恵まれた自然環境の中に校舎建物が配置され、キャンパス・アメニティもかなり充実している。バリアフリーへの配慮については、最近に建てられた建物は問題ないが、創立当初に建設された建物にはこれが欠けているので計画的に改修する必要があろう。

 情報環境としては、全体で学生数3,600名規模の大学で、フリースペースのものを合わせると1,541台のパソコンが用意されている。またパソコン教室の授業使用率は80%にのぼっていて、情報機器を駆使した教育が広範に行なわれていることがうかがわれる。しかし、パソコン自習専用室が不足していることが指摘されており、自学自習が一層必要であることから、周辺環境を含めて改善が求められる。さらに、少人数教育を重視しているため小教室の不足も懸念される。大学院専用の教室・研究室が少ない点も今後大学院の拡大を図るのであれば充実が望まれる。

 総合図書館・体育施設などは名古屋学芸大学、愛知女子短期大学と共用しており、施設の不足が生じないよう配慮していくことが必要である。学生数の規模からすると、保健室の体制もその広さも不十分のように思われる。この施設を利用する学生は今後増えることが予想されるので、施設とスタッフ等の一層の充実が求められる。 

 なお、課外活動を行う部屋が不足しており運動施設を含めて改善することが求められる。
(10)図書・電子媒体等
 2002(平成14)年にオープンした比較的新しい図書館にもかかわらず、オンライン・データベースが未整備することが望まれる。3大学共通の図書館でもあり、15万点弱である蔵書数については充実に向けて努力することが必要であろう。

 また、図書館を日進市の市民に開放しているが、サービスが複写と閲覧の限定されているので、これを貸し出しまで拡大することが望まれる。
(11)管理運営
 学部教授会・学長・学部長、そして大学評議会と、理事会即ち経営者側との役割分担が明確でないように見受けられる。チェックする機構があるか、運営上支障がないのか、点検・評価する必要があろう。学長・学部長の選任については、任免権は理事長にあるとしても、貴大学みずから「教育と職員の区別にとらわれない管理運営体制の整備」を目標として掲げているのであるから、教育および事務職員の意思を反映させる仕組みを考慮することも必要であろう。
(12)財務
 十分な自己資金を有し、借入金も極めて少なく、財務基盤は安定している。また、人件費比率、消費支出水準とも低い水準にあり、直近5年間は、安定した消費収支の状況である。ただ、教育研究経費比率は、直近5年間をみても他大学の平均値を下回っており、教育・研究活性化のための還元・比率の向上が望まれる。
(13)情報公開・説明責任
 財務情報については、教職員・学生を対象に学内掲示板によって一週間、財務三表を公開しているが、学内広報詩等の別の媒体による実質的な公開が必要であろう。今後は、父母および卒業生をはじめとした関係者に対して財務三表を公開するためにも、ホームページを利用した財政公開の実施が望まれる。

 また、自己点検・評価の結果については、今回の加盟判定審査の結果とあわせて公表するとのことであるので、是非とも実行することが望まれる。

III 大学に対する提言

 総評に掲示した事項に関連して、特筆すべき点や特に改善を要する点を以下に列挙する。
一、長所として特記すべき事項

1 教育内容・方法

(1)大学・学部等の教育研究の内容・方法と条件整備
全学
1)2003(平成15)年度から導入されている学生3名に対して外国人教員1名という1年次必修のPower-up Tutorialは、少人数教育の究極的な形式の授業科目で評価できる。

2)海外からの留学生を迎え、英・仏・中ラウンジを設けていることも、大学キャンパス内で学生が国際交流を図るのに役立っている。貴大学の歴史の新しさや規模にしては、成果を挙げていると評価できる。また、外国人教育の受け入れ体制が整備されており、積極的に学生指導に関与していることも評価できる。この点において外国語学部の存在が大きな意味をもっており、教育・研究交流の実質をあげている。

3)各種検定試験による単位認定が活発に行われている点も評価できる。
外国語学部
1)外国語学部では毎年英米語学科学生全員にTOEFL(IP)を義務付け、年次毎の教育効果を測定していることは評価できる。

2)学科ごとに様々な独自の教育方法改善の工夫をしていることは評価できる。たとえば、1、2年次生に対する基礎学力の養成のための語学教育や基礎ゼミの重視、留学の積極的な奨励、留年者に対するきめ細かな指導、就職率を高める努力等が挙げられる。
国際経営学部
1)学生が応募したゼミナール論文の中から優秀なものを選抜して、学部として表彰する。卒業記念論文選抜制度は評価できる。新設の現代国際学部でも継承していくことが望まれる。

2)基礎教育と専門教育において、マルチメディアを積極的に活用した授業展開を試みようとしている点は評価できる。新設の現代国際学部でも一層充実することが望まれる。
(2)大学院研究科の教育・研究指導の内容・方法と条件整備
1)外国語学部における教育の重点である外国語の能力養成に連結する形で、学部学生に大学院の科目の受講を積極的に勧め、語学力を更に高度なものとする機会を与えていることは評価できる。

2)博士課程学生をTA(ティーチング・アシスタント)として外国人留学生に対する授業の補習および論文作成の助言にあたらせている点は評価できる。

3)これまでに大学院学生あるいは修士課程終了者5名を日本語教師として中国、韓国、ベトナムの協定大学へ派遣している実績は、歴史の浅い研究科としては評価できる。

4)国内外で開催される学会・研究会に院生を参加させるために、旅費の補助を行っていることは評価できる。2001(平成13)年度および2002(平成14)年度において、14名の院生が各種の学会で研究発表を行なっている。

2 学生の受け入れ

1)入試委員会の下に学力検査委員会が組織され、入試問題の作成および検証という任務を担っていて、これまで事故は発生していないとのことで、検証体制が機能しているように思われる。また、入学後の追跡調査を行い、選抜方法の違いによる学生の成績を押さえて検討する努力をしていることは評価される。

3 学生生活

1)インターンシップへの参加者も国際経営学部では25名あり、企業の職場で実習経験をした学生には実社会を知る絶好の機会になったことと思われる。新設の現代国際学部においても引き続き充実を図ることが望まれる。

4 研究環境

1)学生に対する「修士論文抄録集」の刊行もよい企画なので、今後一層の発展を期待したい。

5 教育組織

1)教員の年齢層が20代から70代まで広く分布し、しかも中心が40代であることは、外国語学部の特性からも高く評価できる。

6 施設・設備

1)全体で3,600名規模の大学で、フリースペースのものを合わせると1,541台のパソコンが用意されている。またパソコン教室の授業使用率は80%にのぼっていて、情報機器を駆使した教育が広範に行われていることの証左であろう。

二、助言

1 教育内容・方法

(1)大学・学部等の教育研究の内容・方法と条件整備
全学
1)学生による授業評価が各担当教員に委ねられている段階で、まだ学部全体で組織的に行なわれていない。専門ゼミナールの代表者と学部長との懇談会が毎年1回開催され、ここで授業方法についての意見交換が行なわれるようであるが、これだけでは十分ではない。これとの連動で、FD活動もまだ活発であるとはいいがたい。学生の授業評価がすべてではないが、学部の教員の基本的了解の下で、学部全体で組織的に実行して、このデータを基にして更に精力的な授業改善を期待したい。

2)講義要項が統一的な様式で作成されている点は評価できるものの、テーマと授業内容記述が未分化であり、「授業計画」に精粗が見られる。「評価基準」では「総合評価」という曖昧な表現が目立ち、また学科ごとに記述の質量ともに差があるので、より明確な評価基準を示し、記述の詳細度で更に統一を図るような配慮を望みたい。
外国語学部
1)専攻語学科目では少人数で習熟度別の設定という特色が出されているのに対して、副専攻語学科目が少々なおざりにされている感が強い。習熟度別になっていないし、1クラスの規模が大きすぎて、コミュニケーション能力を養う授業になりにくいという問題点の解消を期待したい。
2)英米語学科の「専門ゼミ」の受講者数がやや多すぎるのではないか。適正なゼミ・サイズの検討が必要であろう。
国際経営学部
1)オフィスアワーが制度化されてはいるものの、教員および学生の双方でそれに対する意識が低く、あまり機能していないことは改善が望まれる。
(2)大学研究科の教育・研究指導の内容・方法と条件整備
全学
1)英語コミュニケーションコースでは「現職員の再教育を行う」と明記していながら、2003(平成15)年度大学院授業科目時間割を見るかぎり、土日コースの設置、土日開講、夜間開講など、大学院における社会人受け入れへの対応がほとんどなされていないことは改善が望まれる。
2)国際コミュニケーション研究科の修士課程で、7つのコースを統合する基礎共通授業科目として、たとえばコミュニケーション論あるいは国際コミュニケーション論といった科目を開講することが望ましい。
3)大学院の授業改善のための組織的な体制が整っていないので、学生による授業評価導入についての検討およびFDに関わる組織的な取り組みを実施するための体制づくりが急務であろう。
4)学位授与基準や研究指導体制は明示されているが、課程博士学位は未だ授与されていない。速やかに博士学位を授与できるような指導体制の充実が望まれる。

2 学生の受け入れ

1)2003(平成15)年度の収容定員に対する在籍学生数の比率が大学全体で高くなっている。特に外国語学部英米語学科および中国語学科について改善が望まれる。
2)外国人留学生の受け入れ数が少ない。貴大学の理念からいって少ないのではないかと思われる。もっと積極的に受け入れる必要がある。

3 学生生活

1)セクシャル・ハラスメントについては、事故発生後の対応を重視しているが、事故の予防を心がけた体制を整備しておかなければならない。また、相談窓口が各学科の学科長となっていること、院生向けの記述がないことは改善が望まれる。
2)院生を対象とする給付奨学金の額と採用予定人員枠が小さい点は改善が望まれる。

4 研究環境

1)優れた教育を行うためには、その裏づけとしての研究が欠かせないものがあるが、研究業績がない教授が見受けられるので、研究活動の促進が図られるよう研究条件の整備が望まれる。
2)発足間もない大学研究科ゆえ研究体制の整備は今後の課程であるが、科学研究費補助金申請の件数が少ない。

5 図書・電子媒体等

1)2002(平成14)年にオープンした比較的新しい図書館にもかかわらず、オンライン・データベースが未整備である点は改善が望まれる。

6 情報公開・説明責任

1)財務情報については、教職員・学生を対象に学内掲示板によって一週間、財務三表(資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表)を公開しているが、今後は学内広報誌やホームページを利用した実質的な公開が望まれる。

三、勧告

1 学生の受け入れ

1)2003年度収容定員に対する在籍学生数比率が、国際経営学部国際経営学科については1.31と高くなっているので是正が必要である。新設の現代国際学部国際ビジネス学科では同様の状況にならないよう配慮が求められる。

2 情報公開・説明責任

1)大学全体の自己点検・評価の公表を実施すべきである。

以上